生前贈与で節税対策!でも直前の贈与による生前贈与加算には注意が必要

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一般に、相続が始まる前に贈与をしておくことが、相続税に対する節税対策になり得ると言われています。
実際、上手く贈与を行うことで節税効果は期待できます。
しかしルールを把握して適切に行わなければ意味がありません。

そこで以下では生前贈与に関して注意すべき「生前贈与加算」のことを説明していきます。

生前贈与がなぜ節税になるのか

まず、生前贈与がなぜ節税に効果的なのか簡単に解説しておきましょう。

相続税は、相続に際して発生した財産の移動に対して課税されるものです。
取得する人、財産の内容・種類、価額の大きさなどによって細かく計算方法が決まっており、場合によっては数千万円もの納税義務を課せられることがあります。

相続税の額を小さくするには、各種控除制度を活用することも重要ですが、根本的な対応策としては相続財産自体を小さくすることが重要であると言えます。
ここで役に立つのが「贈与」です。
贈与もその額が大きすぎると贈与額に応じた課税がなされてしまいますが、一定額までは非課税です。
そのため非課税の範囲内で贈与を行い、相続時に移動する財産を小さくすることで、相続税も小さくできるという仕組みになっています。

なお「生前贈与」は、特に相続を見越したときの贈与を指して呼ぶ言い方で、一般的な贈与と異なる性質を持つものではありません。

直前の贈与で節税はできない

一定範囲内で贈与をしておけば相続税を安くできるということでしたが、相続税を免れる目的で行った贈与が無制限に認められてしまうと、他の納税者との間で不平等が生じるとも考えられます。

相続に限らず、納税に関してはこういった平等やバランスが重要視されますので、あまりに釣り合いが取れない事態が起こり得る場合には、制限が設けられることが多いです。
贈与による節税が悪いことと捉えられているわけではありませんが、生前贈与に関して、相続前3年以内になされた贈与は相続税の計算に含めるという措置が取られています。
これが「生前贈与加算」です。

そうすることで、死期を悟った被相続人または周囲の人が急に贈与を初めて課税を免れるという事態を防いでいるのです。

生前贈与加算がされないケース

生前贈与加算が行われる者は「相続や遺贈によって財産を取得した者」に限られています。
そのため相続に際して何ら財産を取得していない者に関しては直前に生前贈与を受けていたとしてもこの計算の対象外となります。

例えば、被相続人の配偶者や子は対象となる一方で、孫や子どもの配偶者、相続人以外の者は対象外です。

このことから言えるのは、子に対する贈与ではなく、孫に対して贈与をすることがより有効な節税対策であるということです。

ただ、孫が常に対象外になるわけではなく、孫が相続・遺贈によって財産を取得するのであれば生前贈与による節税効果はなくなるため注意しなければなりません。
例えば当該孫の親がすでに死亡している場合などです。このときには、代襲相続によって孫が親の立場を承継し、相続人として扱われるのです。つまりこの場合には孫であっても、子が財産を得た場合と何も違わないということになります。
遺言で孫に対して財産を与える旨記載しているケースも同様です。

贈与税をすでに納めている場合

相続の前3年間が対象範囲になるということで、すでに生前贈与に関する贈与税を納めてしまっていることもあるでしょう。
この場合には二重課税にならないよう「贈与税額控除」の仕組みが設けられています。

年間110万円を超える贈与をしているのであれば贈与税を納めているはずですので、これを調整するため、納付額は、相続税の計算にあたって控除するとされています。
そのため、生前贈与加算をされたからといって、本来の状態よりも損をしてしまうというわけではありません。
この点混乱のないように理解しておきましょう。

二次相続向けの具体的な節税対策を解説!

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夫婦と子がいる家庭において夫が亡くなった場合、その財産は配偶者である妻と子に引き継がれます。これが一次相続です。
その後妻が亡くなると、もともと夫の財産であったものも含めてすべて子に引き継がれるようになります。こちらが二次相続です。

そして取得財産の価額が大きい場合には相続税がかかることになりますが、納付額を下げたいのであれば、一次相続の段階において二次相続対策をすることが大切になります。
以下ではその具体的な節税対策を解説していきます。

親子で同居、もしくは二世帯住宅にする

二次相続で問題になるのは配偶者控除が使えないということです。
配偶者控除では実質すべての取得財産を非課税にできるケースが多いですが、その控除に頼り過ぎると二次相続で子にかかる税負担が大きくなりすぎるのです。
そのため一次相続時に、良いバランスで子と配偶者で遺産分割をすることが重要になります。

また、配偶者控除に並んで効果の大きな控除制度が「小規模宅地等の特例」です。
これを適用させることができれば、自宅の敷地に関して最大80%も控除を受けることが可能となります。

例えば同居している子がおり当該制度が使えるとするなら、配偶者は一次相続において土地を取得せず、子が取得しておいたほうが節税できる可能性は高いです。

ただ注意が必要なのは、適用を受けるためには「同居していなければならない」という条件の存在です。
子が自立しており、被相続人の自宅とは別に住所を持っている場合には適用させられない可能性が高くなります。
ただ、要件を満たす二世帯住宅であればここでの同居として扱ってもらえるため、もしも将来的に二世帯住宅も検討しているのであれば、節税対策も視野に入れて計画的に話を進めると良いでしょう。
区分所有として登記されてしまうと適用できなくなってしまいますが、構造上の区分、例えば居住スペースが分離されていることに関しては問題ないことが多いため、工事をする前にしっかりと専門家のアドバイスを受けておくようにしましょう。

生前贈与で非課税に

生前贈与は相続一般で有効とされる節税対策です。
二次相続においても有効です。

ただし注意点が2点あります。

  1. 贈与税がかからない範囲で行うこと
  2. 相続の直前にした贈与は対策にならない

贈与の額は年間110万円以内に抑えなければなりません。相続税がかからなくても贈与税がかかってしまい対策の意味がなくなってしまうからです。
そのため財産が多い場合には長期的に少しずつ贈与を行うと良いでしょう。

また「生前贈与加算の制度」もあるため、相続の直前、具体的には3年以内にした贈与に関しては意味がなくなってしまいます。
あまりに直前の贈与は、相続税から逃れるためにしたものとして、結局相続税の計算に含まれてしまうのです。
そのためいずれの観点から言っても、計画的に、早めに生前贈与をしておくことが大切であると言えるでしょう。

養子縁組で法定相続人を増やす

二次相続では一次相続に比べて法定相続人が減るため、結果として基礎控除額が減るという問題もあります。
そのため課税額が増えてしまいます。

この部分に関しては、養子縁組をすることで対策できます。
ただし実子がいる場合、養子縁組によって子を増やしたとしても、基礎控除の計算上法定相続人として含めることができる養子は1人までと定められています。
つまり、養子縁組を大量に行い全額非課税にするといったやり方は認められません。

生命保険に加入する

生命保険に加入すると、将来の相続財産から保険料を支払うことになり、その契約内容に応じた額が死亡後に返ってくるため、節税対策として有効と言えます。

ただし一定額以上は保険金も「みなし相続財産」となってしまうため、無限に非課税にできるものではないということに注意が必要です。

二次相続とは何か!一次相続との違いや特徴、税制面で注意すべきことを解説

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相続の際、財産の価額が一定以上に達すると相続税の課税対象となります。
数百万円、場合によっては数千万円かかることもあり、特に資産家などの相続では課税対策をすることが重要になってきます。
ただここで難しいのが「今まさに直面している相続問題に対して最適化した節税をしたとしても、長い目で見ると損をすることがある」ということです。

これが二次相続の重要なポイントです。
そこで以下では、二次相続対策をするのであればどのようなことに配慮する必要があるのか解説していきます。

二次相続とは何か

最初に「二次相続」そのものの説明をしておきましょう。

二次相続とはその名の通り、これと対になる一次的な相続の存在が前提となります。
例えば、夫Aとその配偶者である妻B、そしてABの子であるCとDがいる家庭を想定してみましょう。このときAが死亡し、相続が開始されると、Aの財産はBとCおよびDに相続されます。この相続を「一次相続」と呼びます。

さらにその後配偶者であるBも死亡すると、その財産は子CとDに相続されます。こちらが「二次相続」になります。

相続税の観点から言うと、ここで最も着目すべきは「配偶者が存在するか否か」です。一次相続と二次相続の大きな違いは配偶者の有無にあります。

二次相続対策の重要性

配偶者の存在が相続税にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

相続財産のうち課税価格は2億円とし、分かりやすく以下の2つのパターンで簡単に比べてみます。

  • 1つは一次・二次相続の双方において法定相続分に従って各々に取得させるパターン。
  • もう1つは一次相続で財産をすべて妻に取得させるパターンです。

 

一回の相続だけを考慮するのであれば、実は妻に多くの財産を取得させた方が得になります。なぜなら配偶者控除という非常に効果の大きな控除が利用できるからです。

 

上の例に従った一次相続における比較ですが、計算式などは省いて結果だけを言うと、前者のパターンでは相続税額がBとC・D合わせて1,350万円になります。
一方、後者のパターンでは540万円となり、誰にどれだけ取得させるのか工夫するだけで800万円以上納税を免れられるということが分かります。

 

ただ、その後二次相続が発生した際、前者のパターンではすでに子もある程度財産を取得しているため税額は620万円で済みますが、後者のパターンでは大きな財産移動を伴うため、2,878万円も課税されてしまいます。

これらを合計すると、前者では1,970万円、後者で3,418万円となり、結果的に一次対策だけをしたときには約1,500万円も損をすることになってしまいます。

注意すべき控除

前項の例では、大きな差が生じましたが、これは一次相続において配偶者控除に頼り過ぎた結果です。この控除では少なくとも1億6,000万円までは納付する必要がなくなりますが、フルに活用すると、二次相続において当該控除が使えない、子だけが大きな財産を引き継ぐことになり、大金を納税しなければならなくなります。

具体的な金額は、取得金額に応じた税率を使って計算することになり、この税率は取得金額が増すほど大きくなるため、一度に一人が取得する金額は小さく設定した方が納付額は下げることができるのです。

また、自宅の土地を持っている場合には「小規模宅地等の特例」も減額効果が大きいため要チェックです。
被相続人等が使っていた宅地等は、一定要件を満たすことで最大80%も減額される、という制度です。
一緒に住んでいる者であれば適用できる可能性が高いため、二次相続も考慮した上で土地の取得者を検討しましょう。

なお「基礎控除」は法定相続人の数に応じて変動するもので、基本的にこの部分で対策を取るのは難しいですが、養子を取るなどの対処方法も存在します。

遺留分の放棄について!遺言を徹底するための手段

 

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相続において被相続人が何も対策をしていなければ、基本的には法定相続分によってその財産を分配、もしくは相続人間で話し合ってその割合を決定していくことになります。
しかし生前に遺言を残しておけば、その内容に従った相続を行うことができ、被相続人の意志は尊重されます。
被相続人の計画通りに分配することが原則は可能なのですが、この場合であっても遺留分という制度があるため、完全に全ての財産に関してまではコントロールすることはできないケースがあります。

そこで、「遺留分の放棄」というものを事前にしてもらっておくことがあります。
ここでは遺留分の放棄に関することを解説していきます。

遺留分の放棄をするとどうなるか

遺留分はそもそも相続人に留保される相続財産の一定割合を言います。
つまり遺言で一方的な財産分与がされていたとしても、最低限は残された家族等に財産が残るよう、法律で定められているのです。

被相続人が親族でもない他人にすべての財産を与えるという遺言をしていると、配偶者等はすべての財産を失うという事態にもなってしまいますので、こういった場合に遺留分の侵害額をその相手方に請求できることが定められているのです。

あまりに不平等な遺言である場合には一定の者を保護する意味でも遺留分は重要な制度ですが、被相続人からしても自分の財産を思い通りに管理したいという気持ちがあるかもしれません。

そこで「遺留分の放棄」を事前にお願いするということもあり得ます。

あらかじめ遺留分の請求をしないという約束をしてもらうのです。

そうすれば被相続人は遺言によって思い通りに相続財産の分け方を決めることができます。

なお、遺留分放棄の効果はあくまで遺留分に関してだけ生じるため、相続権を失うわけではありません。
したがって、相続財産に大きな負債が含まれているようなケースだと、相続放棄や限定承認等の対策をしなければ、遺留分というプラスの財産のみを放棄した状態になってしまい、大きなリスクを背負うことにもなりかねません。

相続放棄遺留分放棄は分けて考えるよう注意しましょう。

また、被相続人としては、遺言がなければ遺留分放棄をしてもらっても意味がありません。
結局法定相続分に従って遺留分の権利も有する者たちが財産を分配するか、協議によって分配されることになるからです。

自分の思い通りにするには遺言を作成していることが前提となります。

しっかりと法律に則った形で作成しなければ遺言としての効力も生じませんので、行政書士等、専門家のアドバイスを受けながら作成するようにしましょう。

遺留分放棄の手続

相続前にする放棄

相続が開始される前に放棄をする場合、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
被相続人の住所地を管轄する家裁にて手続きを行う必要があります。

個人の財産であるにもかかわらず家裁の許可が必要とされる理由としては、これを要するものとしなければ親やその他の者によって遺留分権利者の意思が不当に抑圧されるおそれがあるからです。

本来、遺留分権利者の生活安定や家族財産を公平に分配するということが当該制度の趣旨であるため、その意味を無にしてしまう危険があるのです。

そこで相続開始前にする放棄では、許可を得るものとして、家裁が一度チェックすることとしているのです。

そこで、放棄が認められるためには、遺留分権利者の自由な意志に基づいてなされていることが求められ、その上で放棄の理由に合理性および必要性がなければなりません。
また、放棄に対する見返りがあるかどうかも重要なポイントとされています。

相続開始後の放棄

相続の前後で大きく手続きは異なります。

すでに開始されている場合にはわざわざ許可を得る必要はなく、権利者が自由に放棄することができ、単に意思表示をするだけで十分とされています。

遺留分放棄の撤回は可能か

相続前に一度放棄をしたものの、やっぱりその撤回をしたいと思うことがあるかもしれません。

しかし原則はこの撤回をすることができません。

一定要件を満たすような事情の変化が生じた際、例外的に認められることもありますが、基本的には撤回できなものとして慎重に判断しなければなりません。

相続欠格について!どんな行為で欠格者となるのか、その場合の効果についても解説

 

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生前、親に対し虐待や行き過ぎた嫌がらせなどをしていると「廃除」という制度を利用され、被相続人の請求により相続する資格を剥奪されることがあります。
この他にも実は相続の権利を失うことになるケースがあります。
それが「欠格」です。
廃除と似た性質は持つものの異なる制度です。
以下ではこの欠格について解説していきます。

相続欠格とは

相続欠格の意義は、相続秩序を侵害した者を、相続から外すことにあります。
特に重要なのは、ある要件を満たすような侵害者は法律上当然にその権利を剥奪されるというところです。

要は、廃除のように被相続人の意志でその適用可否が判断されるようになるのではなく、条件を満たせば民事上の制裁として、自動的に欠格とされるという特徴があるということです。

何をすると欠格になるのか

民法で、欠格になるパターンが定められています。
これを「欠格事由」と呼ばれ、様々な行為がこれらに該当する可能性を持ちます。

被相続人を死亡させたりしようとして刑に処された

1つ目は、被相続人を死亡させたりして刑に処されたケースです。
自分が相続財産を有利に引き継ぐため、他の相続人に対し同様の行為をして刑に処された場合にも該当します。

例えば、殺人罪や殺人未遂罪、さらに遺棄罪などもあり得るでしょう。
遺棄罪は、介護が必要とされる者に対し食事を与えないなど不作為を働くことで問われることがあります。

被相続人が殺害されたのに告訴・告発しない

殺害の事実を知りつつも告訴や告発をしない場合、欠格事由に該当してしまうおそれがあります。
ただし告訴の意味も分からない子供や、加害者が自身の配偶者であるような場合には該当しません。

なお、告訴や告発とは捜査機関に対して犯人の処罰を求める意思表示を意味し、単なる被害届を提出するだけでは告訴等をしたということにはならないため注意が必要です。

詐欺や強迫をして遺言を書かせたり邪魔をしたりした

詐欺や強迫を用いて遺言の内容に影響を与えると欠格事由にあたります。

詐欺は欺いて勘違いさせること、強迫は精神的あるいは身体的に追い詰めて畏怖させることを言います。

要は、本人の意思が重要視される遺言であるにもかかわらず、別の者が被相続人の意志に沿わない内容にしてしまっているという状況です。

具体的には、無理やりもしくは騙して遺言をさせる、撤回させる、取消させる、変更させるといった行為によって欠格となり得ます。

遺言を書き換えたり隠したりした

遺言書の偽造変造破棄、もしくは隠匿をした者は欠格となります。

偽造と変造は言葉が似ていますが、前者は名義を偽って作成することを意味し、後者は遺言書の内容に変更を加えることを意味します。

遺言書を破くことや、捨てたりすることは遺言書の効力を消滅させる行為であり、ここでの破棄にあたります。

また、遺言を隠すという行為も破棄と同じくその内容を見えなくする行為であるため、やはり欠格事由となります。

欠格の具体的効力

欠格事由に該当すると相続権が失われます
仮に被相続人がその者に対し、遺言で贈与をする旨記載していたとしてもその通りに実行されることはありません。

また、相続が始まってから欠格事由が発生することもあり得ます。
この場合でも相続資格喪失の効果は、相続が開始された時点に遡って生じることとされています。
つまり、それまでに財産を引き継いでいたとしても、その後欠格にあたるような行為をした場合にははじめから引き継ぐ権利がなかった者として扱われ、財産の恩恵を受けることはできなくなるのです。

ただしこれらの効果は被相続人との関係のみにおいて発生することであり、他の親族との相続においては通常通りとなります。

また欠格は非行を働いた者自身の制裁であるため、その子に関しては代襲相続をすることは可能です。

相続人「廃除」の意味とその手続、効果についても説明

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「廃除」とは何か

相続が開始されると、基本的には親の財産が子に渡ることとなります。
しかし家庭環境によっては、子に引き継がせたくないと思うこともあるかもしれません。
例えば子供が親を虐待しているようなケースです。

遺言で指定をすれば財産の大半に関しては生前の意思を反映させることができますが、それでも遺留分という制度があることで、これの請求されてしまうと一定割合は財産が渡ってしまうことになります。

そこで重要になるのが「廃除」です。
この制度によれば、遺留分の主張もさせないことが可能です。

以下では、廃除とはどのような制度なのか、具体的にどのようにして、どのような場面で適用され得るのか、解説していきます。

相続資格を剥奪する制度

「廃除」とは、遺留分を持つ推定相続人に対し、相続資格を失わせる制度です。
ただし自由にその資格を剥奪できるわけではなく、その者が非行をした・被相続人に対し虐待や侮辱行為をしていた、などの事情が必要です。

なお、推定相続人とは、将来的にある被相続人につき相続が開始された場合、相続人となることが予定されている者を言います。
例えば被相続人に子AとB、弟のCがいたとすれば、AとBが推定相続人となります。
あえて相続人と呼ばないのは、実際相続が開始された場面でAとBが相続人となるかどうかは分からないからです。
今のところ予定されている者を推定相続人と呼ぶのです。

多くの場合、遺言を書くことで特定の相続人に財産を引き継がせるかどうか、またその割合を決めることができます。
被相続人の意思は強く尊重されるからです。

しかし一切の財産が受け取れないとなれば、残された者がその後生活できなくなるなどの支障が出てくることもあります。
このような者に少しでも生活の支えとなるよう、一定割合留保するというのが遺留分の制度です。

遺言でこれに反する内容が定められていたとしても、遺留分権利者は請求することができるのです。

ただここで問題となるのが、その者との関係性が非常に悪かった場合です。

生前ひどい仕打ちを受けていた場合等には、家庭裁判所に請求をして、その者から相続権を奪うことができます。

請求が認められる具体例を次項で見ていきましょう。

廃除ができるパターン

廃除をしたいのであれば、法定の廃除事由に該当する必要があります。
被相続人に対して虐待あるいは重大な侮辱をしていたこと、もしくは著しい非行をしていたことが求められます。

例えば、重大な罪を犯し有罪判決を受けていたり、相続財産を不当に処分していたりといったことがあれば廃除が可能となるかもしれません。

他にも、ギャンブルで作った借金を被相続人に負わせていた場合や、配偶者であれば愛人を作り不貞行為をしていたなどの事情があれば廃除ができる可能性が出てくるでしょう。

廃除のパターン

廃除が行われるパターンとしては2つあります。
一つは「生前廃除」、もう一つは「遺言廃除」と呼ばれるものです。

生前廃除は、被相続人が生前、家裁に対し調停または審判を申し立てて行うものです。
自らの住所地を管轄する家裁に申立を行い、その後調停または審判による審理が行われることになります。

その結果、調停が成立もしくは審理が確定すれば、その対象となっていた者から相続資格が失われることとなります。

他方、遺言廃除とは遺言執行者が行うものです。
相続開始後、遺言の効力が生じてから、家裁に対し廃徐の申し立てを行うことになります。
その後裁判所による判断が下されるのは同様です。

廃除による具体的な効力

廃除をされるとその対象者は相続資格を失いますが、それはその事案にだけに生じる効果です。
つまり、別の者が死亡し別案件として相続が開始されれば、そちらで相続財産を受けることも、遺留分の請求をすることも可能です。

また、廃除された者の子に関しても影響は受けません。
代襲相続ができるため、親が非行をしたからといってその子までまったく恩恵を受けられなくなるわけではありません。

廃除に関する実情

実際のところ廃除は簡単に認められるものではありません。
家裁も慎重に審議をするため、廃除が認められる事例もそれほど多くないのが実情です。

どうしても財産をあげたくないという事情のある方は、弁護士などの専門家に依頼して手続きを取るようにしましょう。

遺産分割審判とは何か!調停との違いなども解説

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遺産分割審判とは

遺産分割審判とは、遺産分割協議がまとまらなかった場合に裁判所が最終的な結果を下す手続きのことです。
まずは共同相続人など、当事者らだけで協議として話し合いをすることになりますが、その次の段階としては「調停」が行われます。
この時点から裁判所への申し立てが必要となるなど、中立的な立場である第三者が関与することになりますが、「審判」はさらにその先に予定されている手続なのです。

そのため遺産分割における最終手段のようなものと言えます。
ここではこの遺産分割審判に関することを解説し、調停との違いなども説明していきます。

調停との違い

まずは調停と比較的どのような違いがあるのか確認していきましょう。

合意を要するかどうか

両者の最も注目すべき違いは、最終的な判断において当事者の合意を要するかどうかというところにあります。
調停では調停委員が間に入ってよりよい解決を目指すことになりますが、最後に互いの合意がなければ調停成立とすることができず、結果的に遺産分割はまとまりません。
しかしながら審判ではこの合意が不要。裁判所が強制的な決定を行うことになります。

そのためある程度の妥協はあるかもしれませんが調停では両者が納得している状態であるのに対し、審判を経た場合にはどちらかが納得のいかないまま決められた結果を押し付けられることが起こり得ます。

期日の雰囲気

調停では調停委員が間に入り話し合いを進めていきます。
基本的に各当事者は顔を合わす必要もなく、個別に話を聞かれることになります。
そのため和やかな雰囲気で開催されることが多いという特徴があります。

一方で審判の場合には調停委員ではなく審判官が主宰することになります。
より厳格な雰囲気の中進められます。

審判では当事者一同が在席する

調停においては当事者が顔を直接合わさないことで気兼ねなく話しやすくなっています。
冷静に、落ち着いて進められますし、何度か開催される場合でも別室の待合室が用意されるため気を重くする必要がありません。

しかし審判となれば、審判官がいる部屋に一同が在席し、毎回顔を合わせる可能性も高いです。
直接言い合うわけでなくても、精神的な疲労具合は大きくなると言えます。

審判の流れ

いくつか段階を分けて流れを見ていきましょう。

審判の始まり

審判は、審判事件として家裁に申立が行われたときや、調停の申立が行われたが調停不調に終わったときにここから移行されて開始されます。

そのため調停を経ている場合には当然に開始されるものであり、わざわざ申立をする必要がなく、手数料の納付もしなくてかまいません。

期日と審判

審判期日は月に1回程度開かれます。
主張書面や証拠の提出、補足説明、意見の陳述などが行われます。

十分に主張がなされ、資料の提出が行われると、審判官が審判を下します。

審判の確定

審判に対して、後述する即時抗告を当事者の誰もしなければ、審判が確定します。
そうすると、その確定内容に従って預貯金の払戻し、不動産の名義変更など、各種相続手続きが進められるようになります。

なお、審判の開始から確定までに数ヶ月はかかるとされています。
3ヶ月程度で終わることもあれば半年以上、数年かかることもあります。

審判への不服申立

審判内容には強制力が働きます。
そのため納得がいかなくても当事者は従わなければなりません。

しかし審判の告知を受けてから2週間以内であれば「即時抗告」をすることが可能です。
遺産分割審判に対し即時抗告がなされると、抗告審は当事者の陳述を聴取することになり、その結果、即時抗告に理由があると認められれば抗告審が審判に代わる決定を行うことになります。

弁護士が重要

審判は、法的な主張および立証をしなければならず、法律の専門家である弁護士の存在が欠かせません。
少しでも自分に有利な結果とするためにも、弁護士に相談し、審判のサポートをしてもらうようにするべきでしょう。

遺産分割調停はどのように進められるのか、手続の流れを解説

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調停の概要

遺産分割協議で解決できない場合「調停」が開催され、調停委員と呼ばれる専門家を挟んで解決を図ることがあります。
具体的には、裁判官1名と家事調停委員2名以上で組織される家事調停委員会が行うことになります。実務上は弁護士などその他の専門家を含む2名の家事調停委員によって実情の聴取、そして調停の勧告が行われます。

調停では裁判所を利用することになりますが、通常の裁判と異なり紛争に至る一歩手前という状況で申立てを行います。
そのため最終的には両者の合意によって終結するものとされています。

あまり一般に知られている手続ではありませんので、以下で簡単にその流れを説明していきます。

手続の流れ

調停は申立て後、以下のような流れで進行していくことになります。

事前調査

当事者に対し裁判所が、実情の照会をします。
ここで言う当事者とは調停の申立人とその相手方のことです。
照会は書面でなされることもあれば電話でなされることもあるようです。

調停期日の指定・通知

事前の調査を終えると次に調停の期日を指定され、その通知が関係者に渡ります。

調停の進行

ここからが調停の本番となります。

まずは調停委員から進行に関するレクチャーを受け、相続人の範囲・相続分・遺産の範囲の確定に関すること、具体的相続分、遺産分割の方法などの話し合いが始まります。

戸籍上の記載が本来の親子関係と異なっている、養子縁組が無効である、などと主張する場合には「相続人の範囲の確定」として、別途人事訴訟やそれに代わる調停などをしなければなりません。
そうして戸籍を訂正したり、縁組の無効または有効の確定をさせたりすることになります。

遺産の範囲の確定」に関しては、被相続人にどのような遺産があるのか、当事者で必要な資料を準備して示さなければなりません。
裁判所側が積極的に調査をすることは原則ないため、特定の財産につき被相続人のものであるかどうか争いがあるのなら、事前に民事訴訟によって所有者を確定しておく必要があります。

また遺産分割においては「遺言書」の存在が非常に重要となります。
なぜなら法的に有効な遺言書があれば、その内容に従った方法で分割するのが原則だからです。
しかしながら相続人全員が合意して別の方法とすることもできますし、そもそも遺言の効力に関して争いが生じることもあります。
全員が合意して別の方法とすることに関しては調停での解決が図れますが、遺言書の効力についてはやはり別途民事訴訟でその有効性を確定させておく必要があります。

他にも遺産の評価に関することなど様々なことを話し合い、遺産の総額を決定していきます。

調停手続の終結

遺産総額が決まれば最後にその分割方法について話し合います。
具体的に誰がどの程度、どのように受け取るのかということです。

この合意ができれば無事「調停成立」、合意ができなければ「調停不調」となります。

調停が成立するとその内容が調停調書に記載され、これが執行力のある債務名義と同じ効力を持つことになります。
すなわち迅速な執行が可能となります。

一方、調停不調となれば調停の申し立て時に「審判」の申し立てがあったものとして、次の「審判」のステップへと進むことになります。

調停期日のこと

相手とは直接会わないが例外もある

遺産分割調停では基本的に、相手方と直接顔を合わせません。
期日には別々に調停委員のいる部屋に入り意見を伝えます。
こうすることで互いに落ち着いて話すことができ、合意にも至りやすくなります。

しかし調停時間にも限りがあるため、場合によっては当事者全員まとめて話を聞かれることもあるようです。

複数回開催されることも

調停は一度で終わるとも限りません。
複雑な事案だと時間もかかりますし、当事者の数も多くなり意見を調整するのが難しくなってきます。
逆に一度の話し合いで遺産分割が解決できることも少ないため、月に一度ほどのペースで複数回期日が開かれることも多いです。

早ければ2、3ヶ月ほどで終わりますし、長いケースだと年単位で続くこともあります。

遺産分割調停の概要を解説!行われる内容や申立て、注意点など

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遺産分割調停とは何か

相続が発生すると、その相続財産をめぐって複数の相続人で話し合いをすることになります。
このことを遺産分割協議と言い、例えば不動産や株式など、現金等のように分けるのが簡単でない場合に重要となります。
なぜなら、預貯金・現金であれば法定相続分などに合わせてそのままお金を分ければ済みますが、不動産は換価して分配しない限りきれいに分けることが難しいからです。
共有、もしくは単独で所有することになったとしても、その者は現金を全く受け取れないということも起こり得ます。

そのため、遺産分割協議としてどのような分け方をするのか話し合うことが重要になるのです。
しかし取り分を争ってトラブルになることも少なくありません。
ここで行われるのが「調停」です。

当事者だけでは解決できない場合に、調停委員を介して話し合い、解決を目指すというものです。

調停委員には裁判所から選ばれた専門家、弁護士などがなります。
そのためただ第三者を挟んだ話し合いということではなく、専門的な知見を交えた有意義な場とすることができるのです。

調停の内容

基本的に調停では、相手方と直接のやり取りはしません。
調停委員がそれぞれと個別に話をしてその主張を聴取することになります。
そのため調停の期日には裁判所に呼ばれることになりますが、裁判所といっても一般にイメージされるような公開の場ではなく非公開の場ですし、意見をぶつけ合うような場面もありません。

調停の目指すところは「両者の合意」であるため比較的和やかな雰囲気の中で行われ、調停員も双方が納得いくようなやり方を提示してくれたりもします。

そうして、遺産分割調停における論点である「誰がどのような財産をどのようにしてどれだけ分けるのか」というところを解決していきます。
なお、調停委員は解決を図るため色々と助言をしてくれますが、いずれかの当事者の味方になるわけではありません。
そのため通常の裁判における弁護士のような役割を果たしません。

調停を申し立てるには

調停の申し立ても自由にはできません。
申立人となれる者にも条件がありますし、費用・必要書類の準備も必要です。

申立人となれる者

調停の当事者は、相続人やそれと同等の権利を持つ包括受遺者、相続分の譲受人などです。
他にも相続人の債権者や遺言執行者も申立てが可能です。

申し立てにかかる費用

手数料は、被相続人1人あたり1,200円です。
1,200円分の収入印紙だけでよく、また、当事者の数だけ郵便切手代も必要にはなりますが大きな資金を用意する必要はないため、ほとんどの場合費用面で問題となることはないでしょう。

必要書類

調停の「申立書」は当然必要です。
また、相手方に贈る分の申立書も写しとして用意しておきます。

他にも以下のものは準備しておきます。

  • 申立人および相手方の戸籍謄本と住民票
  • 被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本
  • 相続関係図
  • 預貯金の残高証明書

さらに相続財産の状況に応じて別途必要となるものもあります。
例えば不動産が財産として残っている場合には「不動産登記事項証明書」、「遺言書」がある場合にはその写し、相続人以外の当事者も参加する状況なら「その地位を証明する資料」などです。

遺産分割調停での注意

調停では、共同相続人の合意が必要です。
そのためけんか腰で挑むのではなく、お互いが冷静に解決策を見出していこうとする姿勢が大切です。

自分の主張ばかり通そうとするのであれば解決はできませんし、調停を行う意味もなくなってしまいます。
その場合結局、その後に予定されている「審判」を開くことになり、余計に時間も手間もかかってしまうでしょう。
そうならないためには、相手方にも配慮した主張をしていかなくてはなりません。

また、相続財産に関する情報は正直に話すようにしましょう。

誤魔化したり隠したりしていると、その後の審判で事実が明らかになったとき悪い心証を抱かれることになります。
結果的に自分で自分を不利な状況に追い込んでしまうのです。

自分に不利益と思われる情報でも正直に話して解決を目指しましょう。

養子縁組している場合相続はどうなるのか解説

 

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亡くなった方に配偶者や子がいた場合、基本的にはこれらの者が相続人となり被相続人の財産等を引き継ぐことになります。
法定相続分やその他制度からみても配偶者が最も優遇され、子もその次に優遇されると言うことができます。
そのため亡くなった方の子であるかどうかは相続という観点で言えば非常に重要であり、それによって今後の財産状況も大きく変わることになります。
そこで気になるのが養子です。
養子と養親の多くは血の繋がりがありません。
そのため相続において何か不利になることがあるのではないかと考える方もいるかもしれません。
ここでは養子縁組をしている場合の効果、特に相続においてどのような影響を受けるのか解説していきます。

養子縁組とは何か

まずは「養子縁組」に関して軽く説明しておきます。
これは、血縁とは関係なく親子関係を生じさせることをいい、これによって生じた関係においては親を「養親」、子を「養子」と呼んでいます。
また養子には普通養子と特別養子の2種類がおり、それぞれに法的効果の違いや、手続上満たすべき要件の違いなどがあります。

 

一般的に養子と呼ばれるとき、ほとんどは普通養子のことを意味します。
これは血の繋がりのある実の親との関係を終了させることなく縁組をするパターンです。
つまり二重に親子関係が生じることになります。
また戸籍上養親との関係において「養子」と表記されることも特徴です。

普通養子では、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 両者の合意があること。
    ただし満15歳未満なら法定代理人が承諾をすること。
  2. 親となる者は20歳以上であること、かつ、子が養親より年上でないこと
  3. 結婚している場合において未成年を子とするのであれば、その夫婦が共同で縁組をすること

 

次に特別養子についてですが、こちらは比較的要件が厳しく設定されています。
というのもこちらは実親との親子関係を終了させるなど、強い効力を生じさせるものだからです。

具体的には以下のような要件を満たす必要があります。

  1. 夫婦でともに養親となること
  2. 親側は25歳以上、養子は6歳未満であること
  3. 実親の同意を得ること

これらを満たした上で養親となる者が家裁に請求、そこで審判を経て成立に至ります。

養子の相続権

縁組をすると、氏が改められることあったり戸籍が変更されたりなど、色々な効果を生じることになります。

その中でも気になるのが相続に関することです。
結論から言うと、養子であっても相続をして財産等を引き継ぐことは可能です。

ただし、普通養子か特別養子かによって相続の在り方は変わりますし、縁組をした時期によっても変化してきますので混同しないように注意が必要です。

 

複雑になるのは普通養子の方です。
こちらは実親との関係が続くため、相続できる範囲が広がります。
さらに、養子の子(被相続人から見ると孫)がいる場合、その子が縁組の前に出生しているのであれば実親との関係は消滅せず相続の対象となり得ますが、逆に養親との関係において相続は行われません。
一方、縁組後に出生したなら実親との相続はありませんが、養親との関係において相続の対象となることはあり得ます。

 

これに対し特別養子だと、実親との関係が終了しているため養親との相続しか発生しなくなります。

まとめ

養子縁組は、血の繋がりのない他人に親子関係を生じさせるもので、非常に大きな効果を生ずる行為です。
本来相続の対象となるはずのない場面で相続人となりその者の財産を受け継ぐことになるなど、養親が亡くなってからも強い影響を与えるものです。
そして普通養子か特別養子かによって相続の範囲が異なる上に、その養子の子の相続をも左右するなど、複雑な仕組みになっているため、実際に相続が開始されたときには専門家に相談するようにしましょう。