【遺産相続手続きの費用(1)】概要と費用一覧

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 多くの遺産相続手続きでは、相続したことを証する書面を公的機関や金融機関などに提出しなければなりません。

 

一般的な遺産の相続手続きにかかる公的機関や金融機関などに支払う手数料もかかります。

まず、遺産相続の手続きにかかる費用の概要を確認します。

 

遺産相続の手続きにかかる費用の一覧

遺産に含まれる財産の一般的なものは以下の通りです。

 

  • 預貯金債権
  • 株式
  • 宝石、骨董等
  • 不動産

 

遺産の種類は他にも考えられますが、上記の中で相続手続きが必要な預貯金、株式、車、不動産について、手続きにかかる費用を見ておきましょう。

 

遺産相続の手続きでは戸籍謄本代がかさむ

遺産相続手続きの際は、金融機関や法務局などに相続したことを証する書面一式を提出しなければなりません。

 

相続したことを証する書面とは、戸籍関係書類と住民票関係です。

遺産相続手続きの際は、相続人が生まれたときから死亡するまでの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍、住民票の除票を市区町村から取り寄せなければなりません。

 

戸籍謄本などの公的な書類は1通だけ取得するのであれば、費用が大きな負担となることはありません。
しかし、被相続人が結婚や離婚、転籍が多かった場合、その数は膨大になります。

 

また、相続人の戸籍謄本や住民票、相続人の印鑑証明書も必要です。

 

相続手続きに必要な一般的な書類と取得費用

書類の種類 費用
被相続人の除籍謄本、改製原戸籍 1通750円程度
被相続人の住民票の除票 1通300円程度
相続人の戸籍謄本 1通450円程度
相続人の住民票、印鑑証明書 1通300円程度
固定資産評価証明書(不動産を相続する場合) 各市区町村規定による

 

注意しなければならないのは、除籍謄本が数十通にのぼるケースもあるということです。

 

特に数次相続や被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合、他に相続人がいないことを証するために相当数にのぼる除籍謄本、改製原戸籍が必要です。

 

そのようなケースでは通常、除籍謄本、改製原戸籍を遠方の市区町村から郵送で取り寄せるので、小為替手数料が小為替1通につき100円かかります。

 

除籍謄本、改製原戸籍だけで2~3万円かかるケースもあります。
金融機関などから除籍謄本、改製原戸籍はできるかぎり原本を返してもらったり、法定相続情報証明を法務局に申請したりして、費用を抑えるとよいでしょう。

 

法定相続情報証明の申請は無料ですが、弁護士や司法書士行政書士などの専門家に依頼する場合は報酬がかかります。

 

なお、原本は無条件に返してもらえるわけではありません。
金融機関、法務局、税務署など相続手続きをする機関ごとにルールが違いますので、確認することをおすすめします。

 

財産ごとの相続手続きの費用

一般的な遺産相続手続きに必要な費用は、以下の通りです。

 

財産ごとの相続手続きの費用

被相続人名義の預貯金の解約 手数料なし(ただし残金の振込手数料など必要)
株式の相続手続き費用 相続人名義の振替先口座開設費用など(各証券会社規定による)
車庫証明の取得費用(2,500から3,000円程度) ・ナンバープレートを変更する時の費用(1,500円から2,000円程度)
不動産 ・登録免許税 (相続を原因とする場合は固定資産評価額の1000分の4を乗じた額)

 

 

その他の費用

その他にも、次のような費用がかかります。

  • 遺言書検認費用
  • 相続放棄や限定承認の費用
  • 専門家に依頼する費用

 

自筆証書遺言または秘密証書遺言がある場合、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

検認の費用は遺言書(封書の場合)1通につき収入印紙800円分、連絡用の郵便切手代です。

 

また、相続放棄や限定承認する場合も、収入印紙代と郵便切手代がかかります。

 

 

参考:相続放棄・限定承認で家庭裁判所に納める費用

 

  収入印紙 郵便切手代
相続放棄 800円分(申述人1人につき) 連絡用の郵便切手必要
限定承認 800円分

 

専門家に依頼する費用は、財産それぞれの手続きを個別に依頼するか、パックで依頼するかで違います。
行政書士司法書士、弁護士などに預貯金・株式・車の相続手続きを依頼する場合、報酬は2万円から10万円程度でしょう。

 

ただし、不動産の相続登記については司法書士や弁護士に別途依頼することになるので、詳しくは次回の記事で紹介します。

 

遺留分侵害額請求権の時効・期限と行使するときの注意点

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遺留分侵害額請求権の時効や期限

遺留分侵害額請求権には時効があります。
大きくは、下記2点のようなケースです。

 

 

  1. 相続開始及び遺留分を侵害する遺贈、贈与があったことを知った日から1年間、遺留分侵害請求権を行使しない場合は、時効により消滅します。
  2. 相続開始時から10年経過した場合、遺留分侵害額請求権は消滅します。

 

これらのケースについて詳しく説明します。

 

(1)相続開始及び遺贈、贈与があったことを知った日から1年間

相続開始は分かりやすいと思いますが、遺贈、贈与について補足しておきましょう。

 

遺贈というのは、被相続人遺言書によって受遺者へ遺産を渡すことです。
通常は、被相続人の遺産は相続人が受け継ぐことになりますが、遺産の全て又は一部を相続人以外に相続させることもできます。
被相続人が、生前お世話になった人へ遺産を相続させたいと考える場合などに、遺言書により財産を遺贈することができます。

 

贈与とは、この場合生前贈与のことを指します。
被相続人が生きている間に、相続人などに財産を渡す行為を贈与といいます。
遺留分請求の対象となるのは、被相続人に関する相続開始前1年以内に贈与されたものです。

 

また、相続が開始する前1年を超える贈与であったとしても、被相続人及び贈与を受けた者が遺留分を侵害している事実を知りながら行った贈与である場合は、遺留分侵害額請求の対象となります。

 

1年の消滅時効のカウントがいつから始まるかについてですが、単純に贈与や遺贈があったことを知った時というわけではありません。
相続財産に対する自分の遺留分が侵害されて、その贈与や遺贈が遺留分侵害額請求の対象となっていることを知った時からです。

 

実際には「知った」について厳密な規定があるわけではなく、ある程度漠然とした起算点となります。
ですから、遺留分侵害額請求を行う側としては、原則として被相続人が亡くなった日から1年間で時効消滅するものとして考えておいた方がよいでしょう。

 

(2)相続開始時から10年間

遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分の対象となる遺贈、贈与があったことを知らないまま10年経過した場合も、遺留分侵害額請求権を行使することができなくなります。
受遺者(遺贈や贈与を受けた人)も、長期間何も請求されていないのに、いつまでも請求権だけが残っても困りますので、10年で時効となります。

 

ここで注意していただきたいのは、相続開始時から10年経過した場合の時効は、消滅時効ではなく、除斥期間という解釈になっているということです。

 

遺留分侵害額請求権の消滅時効除斥期間の違いですが、消滅時効には「時効の中断」という概念がありますが、除斥期間にはその概念がありません。
相続開始時から10年経過すると、途中何があっても時効が中断することなく、請求する権利を失うということになります。

 

遺留分侵害額請求の時効を中断させる方法

説明した通り、相続開始時から10年の時効については除斥期間という解釈のため、時効を中断させる方法はありません。
ですが、相続開始及び遺贈、贈与があったことを知った日から1年間の消滅時効に関しては、時効を中断させる方法があります。

 

遺留分侵害額請求権は形成権ですから、一度でも遺留分侵害額請求権を行使すれば、時効を中断させ権利の消滅を防ぐことができます。
このときの権利行使は、証拠が残る内容証明郵便の送付により行うことをおすすめします。

 

時効以外で遺留分請求できない場合も

遺留分侵害額請求権は、1年の消滅時効、10年の除斥期間以外でもなくなる場合があります。

 

それは「相続人の廃除」という制度です。
「相続人の廃除」とは、被相続人への虐待や侮辱、非行等を行った相続人に対して、被相続人が生前に、または遺言によって家庭裁判所にその相続人の廃除を請求するものです。
この廃除により、虐待等を行った相続人の相続権を奪うことができます。

 

被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺言によって兄弟姉妹に財産を相続させないことができます。
一方、それ以外の配偶者、子、直系尊属といった相続人の遺留分は、遺言によっても侵害することができません。
ですが「相続人の排除」を行った場合は、財産を相続させないだけでなく、遺留分侵害額請求権も奪うことになります。

 

ただし「相続人の廃除」は、家庭裁判所への請求が必要で、かつ簡単に認められるものではありません。
なぜなら、相続には相続人の生活を保障するためという側面があるからです。
家庭裁判所への請求や遺言によって、簡単に相続人の権利を奪えるようでは、相続人の生活を保障することができないからです。

 

遺留分侵害額請求権を行使するときの注意点

権利行使するときの注意点を確認しておきましょう。

 

時効に関する勘違いに注意

遺留分が関係するような相続問題の場合、元々の遺言書が無効であるとして遺言無効確認の調停や訴訟を起こすことがあります
しかし、注意していただきたいのは遺言無効確認の調停や訴訟を起こしても、遺留分侵害額請求権の消滅時効は中断しないということです。

 

一見、同じようなことを争っていると思われるかもしれませんが異なった手続きですから、遺言無効確認の調停や訴訟を起こす場合でも、それとは別にあらかじめ遺留分侵害額請求権の行使のために内容証明郵便を送付することを忘れないようにしましょう。

 

また、遺言無効確認だけでなく、遺贈や贈与の無効を主張する場合も同じです。
遺贈や贈与が無効ということになれば、遺留分侵害額請求権を行使する必要はありませんが、無効とならなかった場合は、遺留分侵害額請求権を行使する可能性があります。
そのため、遺贈や贈与が無効であることを主張し調停や訴訟を行う場合でも、遺留分侵害額を請求する旨の内容証明郵便を送付しておくことで、遺贈や贈与の無効が認められなかったときでも消滅時効を回避することが可能です。

 

弁護士への依頼も検討

遺留分侵害額請求権の行使は裁判所への手続きなどは必要ありませんし、証拠を残すために内容証明郵便を送付するくらいですから、必ずしも弁護士に依頼しなければならないわけではありません。

遺留分の侵害について相手方と協議する際も、状況によっては弁護士に依頼してしまうと相手方が態度を硬化させてしまい、話し合いがうまく進まない場合もあります。

ですが、相手方と円滑に協議が進まない場合は、弁護士への依頼も検討しましょう。

例えば、交渉する相手方と直接話し合いをすることが困難な場合もあるでしょう。
もともと不仲であるとか、当人同士では具体的な話ができないとか、仕事が忙しく話し合いの機会が作れないといった場合は、弁護士に依頼することでスムーズに話が進むこともあります。

 

また法律知識や専門知識のない一般人同士では、具体的にどう話し合いを進めたらよいのか分からないというケースも多いでしょう。

話し合いが進まないまま時間だけが過ぎていくということもあります。
遺留分侵害請求に限りませんが、裁判所の調停や裁判に発展する前に話し合いで決着することが時間と費用の節約になります。

早期解決を望む場合も、弁護士への依頼を検討してみてください。

遺留分侵害額請求権の行使方法について解説

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遺留分侵害額請求権の行使方法

遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害している他の相続人や、遺産を相続した受遺者に対して行います。

 

遺留分侵害額請求権は、形成権ですから相手側へ意思表示するだけで効果が発生します。

 

つまり相手側と話し合いによって請求することもできますし、相手側との直接交渉が難しい場合や相手が請求に応じない場合は、裁判所を利用することもできます。

 

ですから、遺留分侵害額請求権の行使には決まった方法があるわけではないのですが、一般的な進め方について順に説明していきましょう。

 

(1)相続財産の調査と相続人の確定

まず、被相続人にはどのような相続財産があるのか、また誰がどのくらい相続したのかを調査して確定させる必要があります。

 

特に遺留分に関しては、被相続人遺言書の内容をしっかり把握する必要があります。
遺言書の内容を見て、誰が遺留分を侵害しているのか確認しておきましょう。

 

 

(2)相手方へ内容証明郵便で請求する

遺留分の内容と遺留分侵害額請求する相手方がわかったら、遺留分侵害額請求の意思表示を相手方に示さなければなりません。

 

「あなたが侵害している遺留分の返還を請求します」という意思表示を相手側に示すだけで、遺産を貰い過ぎた相手方は遺産を返還する義務が発生します。

 

このときの意思表示方法には、決まった手続きなどがあるわけではありませんから、どんな方法でも構わないのですが、口頭で伝えただけでは証拠が残りません。

 

確実に相手方へ遺留分侵害額請求したという証拠は残しておきたいので、郵便局の内容証明郵便を使って請求することをおすすめします。

 

内容証明郵便とは、日本郵便の一般書留郵便物で文書の内容を証明するサービスです。
差出人、郵便局、相手方の三者に全く同じ内容の文書が残りますし、確定日付や配達証明サービスをつけることもできますから、相手方へ遺留分侵害額請求したという証拠を残すことができます。

 

(3)相手方と交渉する

内容証明郵便による遺留分侵害額請求権を行使した後、相手方が侵害額の支払いを検討しているようなら、細かい侵害額の確認や具体的な支払い方法について協議します。

 

全く知らない方が受遺者となっている場合もありますが、基本的には親族間の問題ですから、話し合いによる決着が望ましいでしょう。

 

ただし、相手方や他の相続人と遺留分侵害額について交渉を行う場合、当人同士では話がまとまらないケースも多いため、そのような時は弁護士に相談し、客観的な視点から協議の調整をしてもらうことをおすすめします。

 

相手方と話し合いにより、遺留分侵害額の支払いを受けられた場合は、ここで終了となります。

 

ですが、このような協議を行っても相手方が全く遺留分侵害額請求に応じないとか、そもそも内容証明郵便を送付しても無視するといった場合は、家庭裁判所遺留分侵害額請求調停を申立てるというステップに進むことになります。

 

(4)家庭裁判所へ調停を申立てる

遺留分侵害請求については、離婚問題などと同様に調停前置主義がとられています。
ですから、最初から訴訟を起こして裁判するということはできませんのでご注意ください。

 

遺留分侵害額請求調停は、遺留分を請求する相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てます。

 

当事者が合意で定める家庭裁判所がある場合は、そちらに申立てても問題ありません。

 

必要書類を揃えて申立てを行った後、受理されると裁判所から第1回目の調停の期日が通知され、裁判所に出頭することになります。
調停では、裁判所が選任した調停委員が加わり、話し合いを進めていきます。

 

調停は、相手方と合意に達するまで続けられることになりますが、合意できた場合は調停調書が作成されます。

 

この調停調書には裁判の判決と同じ効力がありますので、調書内容に従わず違反があった場合は、すぐに強制執行ができるという効果があります。

 

(5)裁判所へ訴訟提起する

どうしても調停による話し合いでは決着しないという場合は、裁判所へ訴状を提出して訴えを提起するしかありません。

 

訴状の提出先は、相手方の住所地に加えて被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所となります。
調停の場合と同じく、当事者が合意で定める地方裁判所もしくは簡易裁判所がある場合は、そちらに申立てを行っても問題ありません。

 

ただし、裁判となった場合は、個人では対応することが難しいので、相続関係に詳しい弁護士に依頼することになるでしょう。

 

まとめ

遺留分侵害額請求権を行使するためには、裁判所への請求等は必要なく、遺留分を侵害している相手方に対して、権利行使の意思表示をするのみで足ります。

 

この相手方への意思表示は口頭で行っても良いのですが、確実に遺留分侵害額請求を行ったことを示すためには、証拠が残る内容証明郵便による請求をおすすめします。

遺留分侵害額請求権とは?

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家族が亡くなって相続が発生した際に、遺言書が残されているというケースは少なくありません。

 

遺言書では、法定相続に近い割合で相続を指定していることもありますが、法定相続人にとって不公平な相続の指定がされていたり、法定相続人以外の受遺者にすべて相続させるという内容だったりすることもあります。

 

民法上では、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人には、相続財産の遺留分を請求し取得する権利が認められています。

 

このような権利のことを、遺留分侵害額請求権といいます。
遺留分侵害額請求権とは、2019年7月1日から施行された改正民法により、それまでの遺留分減殺請求権から名称と内容が変更されたものです。

 

遺留分侵害額請求権とは

遺留分とは、相続が発生した際に被相続人(亡くなった方)が遺言書により法定相続人に相続財産をまったく与えないと指定していても、法定相続人に保障される一定の相続分のことです。

 

遺留分の制度は、被相続人が自分の財産を自由に処分できる権利と相続人の生活が保障される権利のバラランスをはかったものです。
この遺留分を得るために行使することができるのが、遺留分侵害額請求権です。

 

遺留分がある法定相続人とは

被相続人の法定相続人であったとしても、遺留分がない場合があります。
遺留分のある相続人のことを「遺留分権利者」といいますが、法定相続人=遺留分権利者ではありませんので、ご注意ください。

 

遺留分権利者となれるのは、被相続人の配偶者、子、直系尊属です。
直系尊属被相続人に子がいた場合、法定相続人になりませんし、遺留分権利者ともなりません。

 

ここで注意していただきたいのは、被相続人兄弟姉妹は法定相続人となった場合でも、遺留分権利者とはならないということです。

 

被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありませんから、被相続人が遺言で兄弟姉妹に全く財産を遺さなかったとしても、遺留分侵害額請求をすることはできません。

 

これは、相続における相続人の生活保障に関して、兄弟姉妹まで含める必要はないという民法の考え方によるものです。

 

遺留分権利者となった場合、どれくらいの遺留分を請求することができるのか説明しましょう。

 

遺留分は、直系尊属のみが相続人となる場合は相続財産全体の1/3、それ以外の場合は相続財産全体の1/2となります。

 

直系尊属のみが相続人となる場合とは、被相続人に配偶者や子がおらず、直系尊属(父母など)だけが法定相続人となる場合です。
その他の場合とは、法定相続人が以下のようなパターンになるときです。

 

  • 配偶者だけ
  • 配偶者と子
  • 子だけ
  • 配偶者と直系尊属

 

このような相続人の場合、遺留分は相続財産の1/2となります。
なお、遺留分権利者が複数いる場合は、遺留分をさらに遺留分権利者の法定相続割合で割ります。

 

例えば、相続財産が3,000万円で遺留分権利者が被相続人の子3人だった場合の子1人当たりの遺留分は、下記のような計算になります。

 

子1人当たりの遺留分=相続財産3,000万円×1/2×1/3(子3人)=500万円

 

このような場合で、子3人の内1人が遺留分侵害額請求しないというときでも、請求しなかった分の遺留分侵害額が他の2人の子の遺留分に加算されるわけではありません。
上記の例でいうと、子1人当たりの遺留分が500万円より増えることはありませんのでご注意ください。

 

形成権とは

遺留分侵害額請求権を行使するためには、裁判所へ訴えるという必要はなく、相手側に遺留分侵害額請求をするという内容を伝えるだけで効力が生じることになり、これを法律上では形成権といいます。

 

形成権というのは、権利者からの一方的な意思表示によって権利関係に一定の変更を生じさせる権利のことです。

 

一方的な意思表示よって権利行使することができますから、相手側が承諾しなくても、意思表示するだけで直ちに効果が発生します。

 

遺留分侵害額請求に関しては、「被相続人の相続財産に関する遺留分侵害額を請求します」という意思表示を相手に発信し、到達した時点で権利行使の効果が発生するということになります。

 

つまり、口頭で伝えただけでも、遺留分侵害額請求権を行使したといえるわけです。

ただし、実際は口頭で伝えただけで相手側がすぐに納得するケースは少ないため、内容証明郵便の発送などが必要になってきます。

 

まとめ

遺留分侵害額請求権とは、被相続人の遺言が一定の相続人に一切の財産を相続させないという内容であったとしても、遺留分に関しては、受遺者(財産を受け取った人)に対して侵害額を請求できる権利です。

 

この遺留分侵害額請求権は形成権ですから、単独の意思表示を行うだけで法律効果を生じさせることができる権利です。

どんな財産に相続税がかかるのか!非課税財産と課税財産を解説

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ある者が死亡し相続が開始されると、その者の保有していた財産の価額に応じて課税がなされます。

しかしあらゆる財産に対して課税が行われるわけではありません。
その性質に照らし、課税されるものとそうでないものとに分けられているのです。

以下では、これら課税財産非課税財産の区別や、その具体例などを挙げて解説していきます。

課税財産について

まずは相続税の計算に含めなければならない財産から見ていきましょう。

原則としては、金銭に見積もることができるものであればすべて課税の対象となります。

例えば現金や預貯金は価値をそのまま評価できますし、当然計算に含めることとなります。
その他にも、有価証券や不動産、宝石、自動車、腕時計などは現金のように見たままで価値が判断できるものではありませんが、これを換価して金銭化させることが可能ですし、鑑定などを行い金銭に見積もることが可能です。

ただその評価の方法には色んなパターンがあり、不動産であれば家屋なのか宅地なのか、また山林や田畑といったものであることもあるでしょう。それぞれその評価方法は異なります。

他にも、死亡保険金・死亡退職金、死亡する前3年以内に贈与された財産、建設中の家屋なども課税対象となりますので注意が必要です。
贈与はよく節税対策として紹介されるものですが、今挙げたように、直近3年分の贈与は節税の効果が期待できません。
すでに贈与税の納付をしていたとしても相続税の計算に含めなければならず、その上で控除を行うという仕組みになっています。

死亡保険金や死亡退職金に関しても、死亡時点において本人の財産になっているものではないにもかかわらず、相続財産と同等に扱うことが規定されています。
ただし一定額までは含めなくても良いとするルールがありますので、基準額を上回るのかどうか、よく確認し、詳しくは専門家に相談するようにしましょう。

非課税財産について

次に、相続税のかからない財産、非課税財産に関して見ていきましょう。

遺贈によって取得されたものなども、広く課税対象となるのが原則ですが、国民感情等に配慮し、あえて対象外にしている財産も多くあります。

保険金や死亡退職金に対して、基準額まで非課税としているのもこういった観点からもうけられたルールです。

もっと分かりやすいのは、祭祀財産です。
例えば仏壇や墓所、仏具などは、祖先崇拝という慣習に配慮した結果、非課税になります。

 

また交通事故で被相続人の死亡することも起こり得るでしょう。
交通事故で死亡してしまった場合、本人は死亡しておりもはや賠償金を請求することが不可能になってしまっているものの、その遺族等に対し賠償金が支払われることがあります。
死亡に際して生じたものではありますが、賠償金に対してまで相続税を課すべきではないということで非課税になっています。
なおこの賠償金に関しては遺族の所得となりますが、所得税法上も課税の対象から外されています。

どちらに含まれるのか分からないときは専門家に相談

ここで紹介した分以外にも、様々な財産が非課税対象に含まれていますし、課税をされる場合でもその評価方法は細かく分けられています。
そのため自身が相続人となり取得する側になった場合はもちろん、被相続人の立場になる人に関しても、事前に対策を取ろうとするのであれば一度専門家に相談して確認しておくと良いでしょう。

被相続人が事前にこれらをきちんと整理しておくことは、死亡後に生じる身内間でのトラブルを防ぐためにとても重要です。
専門家も様々ですが、弁護士に依頼しておけば、その後紛争が生じたとしても最後までサポートしてもらうことができますので、特に大きな問題が起こりそうな場合には弁護士に相談するようにしましょう。

相続税を2割増しにされる人がいる?2割加算の制度を解説

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相続税は、相続が起こるたびにその課税機会が設けられます。
親から子へ、子から孫へと財産の移動は起こり、孫が取得する財産の中には親(孫から見た祖父母)から受け継がれてきたものも含まれます。
しかし孫を養子縁組すれば、基礎控除における控除額の割増効果が得られるとともに、課税機会を一回分回避できてしまいます。

結果としてかなりの節税効果を得ることができますが、課税を避けるためにこういった縁組が乱発されないよう法律では措置が取られております。
その一つが2割加算の制度です。

相続税の課税は平等ではない

節税をする目的で養子縁組をしたとしても、その行為自体悪いことではありません。

ただし別のページで解説したように、基礎控除額の計算においては法定相続人としてカウントできる数は1人もしくは2人までと定められていたりなど、いくつか措置が取られていたりします。

ここではもう一つの措置として、2割加算の制度を紹介しますが、こちらは相続人の属性により課税の計算上2割を加算して納付額を定めるというものです。

 

通常、個別の税額を計算する際、基礎控除額等を引いたりして算出された相続税の総額に対し、相続人それぞれの案分割合を乗じて決定されます。
しかし法律では「配偶者以外」で「1親等内の血族以外」の者である場合には課税を2割多く計算するものと定められております。
またこのとき、孫のように元々当該制度の対象である者に対し縁組をして孫養子にしたとして、これにより1親等になっていても対象者として扱うことが規定されております。

ただし、直系卑属(孫やひ孫など)以外の者を養子にして1親等としても、この制度は適用されません。

加算される理由

この制度は、課税機会の減少を防止するという役割を果たしています。
孫の場合、親から子への相続、そして子から孫への相続といった具合に、そのたびに課税され納付を行うのが通常です。
しかし孫養子にすればその機会を一回分減らすことができています。

公平性を保つためにも、関係性が少し遠い場合には少し税額を増やすことで調整しているのです。

ただ、こうして一つ世代を飛ばした方が納付額を下げられる可能性も十分にあり得ます。
そのため割増されるからといって必ずしも損になるわけではなく、総合的に考えて判断をすることが大切ですし、一度親に渡ることに問題がある場合には縁組をして先に資産を渡しておくという手段を取っておいたほうが良いこともあるでしょう。

割増計算される者とされない者の具体例

簡単に、当該制度の対象・非対象とされる者を挙げていきます。

まずは対象外の例ですが「両親」「配偶者」「実子」「血族以外の養子」「代襲相続した孫」が代表例です。

次に対象となる者の例ですが「孫養子」「兄弟姉妹」「甥っ子」「姪っ子」などが代表例です。

 

ここで注意したいのは、同じ孫でも代襲相続した孫に加算はないということです。

代襲相続とは、孫の親が死亡していたり、相続権を喪失していたりしたとき、その者を飛ばして孫が相続するケースを言います。

ただし親が相続放棄をした場合には代襲相続は起こらないことに注意が必要です。
このときは孫も相続する権利を有していないことになるからです。

生命保険と2割加算の問題

生命保険契約をしていると、本人の死亡後にお金を受け取ることができます。
そしてこのときのお金は原則として相続税の対象として含めません。
しかしこの契約をしても無制限にお金を流せられるわけではなく、ある計算のもと基準額を算定し、その基準を超える場合にはみなし相続財産として扱われ、割増しのルールが適用されることがあります。

具体的には、保険金の受取人が子や配偶者であれば適用されませんが、受取人が孫や孫養子の場合には割増しで計算がされていまいます。

ただしこれらの者であっても、相続放棄をしているのなら、生命保険金の受取人となっていても、当該制度の適用を受けることはありません。

相続税を下げるために養子縁組が有効?その理由や注意点を解説

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相続税はすべての人に対して問題となるものではありません。
なぜならその計算上、基礎控除が適用されることで、少なくとも3,600万円までは非課税になるからです。
そのため一定以上の資産を蓄えていた被相続人がいなければ特に気にする必要はなく、実際、相続税の申告が必要になるケースは割合少ないです。

ただし、一回の相続によって数百万円~数千万円もの納付を強いられることもあるため、資産家にとっては大きな問題となります。
そこでここでは、少しでも納税額を下げるため、相続税対策の一つである養子縁組に関して解説していきます。

養子縁組も相続税対策になる

冒頭でも述べたように、身内の個人的な財産であるにもかかわらず、相続時には課税の機会が設けられています。
場合によっては非常に大きな額の納税義務が課せられてしまいますので、少しでも多く家族等に遺産を渡したいと考えるのであれば、節税対策を取るようにしましょう。

その方法にも色々とありますが、養子を取るということも実は効果的であるということをご存知でしょうか。
そもそも基礎控除額に達しない部分に関しては非課税であることを説明しましたが、この控除額は法定相続人の数によって変動するものなのです。
3,000万円をベースに、法定相続人一人あたり600万円が加算されるという仕組みです。
例えばある相続において、法定相続人として配偶者と子二人がいる場合には3,000万円プラス1,800万円(600万円×3人)で、合計4,800万円が基礎控除額になり、この分は課税されなくなります。

つまり、養子縁組をするということはこの計算上の法定相続人の数が増えることになり、一人当たり600万円分控除額が増加、その結果相続税が少なくなるのです。

節税のために縁組するのはいいのか

養子を取ることが節税に繋がる、ということを説明しましたが「そのような目的(節税目的)で縁組をするのは良いのか」と考える人もいるでしょう。

実際、節税を図るために縁組をする者も存在し、裁判沙汰になった例もあります。
養子を取った被相続人の実子が縁組の無効を主張した事件です。

縁組は、一つの相続にかかる税金を下げるということには有効と言えますが、各相続人からすると自分の取得分が減ってしまうため、身内が縁組に対して不満を抱くということは珍しくありません。

ただ、実際に起こった事件に対する裁判所の判決では「節税の動機と縁組の意思は併存し得るもので、専ら節税をするために縁組をしたとしても、それだけで『縁組の意思がない』とまでは言えない」と評価されています。
つまり、節税目的の養子縁組だからといって無効になるわけではない、ということです。
ただ、客観的に見て縁組の意思がないと明らかに判断できる状況や、明らかに節税のために利用したと判断できるような場合には無効になる可能性はありますので、注意は必要です。

計算上の養子制限には注意

節税のために養子縁組をしてもダメではないということが分かったかと思います。
しかし本人にとっての一番の関心事は、縁組によってどれだけ節税できるのかというところでしょう。

もし養子縁組による効果が無制限に認められるのであれば、常に非課税を目指すことが可能となります。
ただ法律上、そのような計算はできないようになっています。

税の計算上、法定相続人として数えられる人数に制限が設けられているのです。
パターンは2つあります。

  1. 実子がいるときには「1人」まで
  2. 実子がいないなら「2人」まで

つまり、基礎控除における養子縁組の効果は600万円×2人の1,200万円が上限ということになります。

ただし、厳格な手続を要する特別養子縁組や、配偶者の実子を被相続人の養子として迎え入れた場合などには、この制限にかかりません。

生前贈与で節税対策!でも直前の贈与による生前贈与加算には注意が必要

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一般に、相続が始まる前に贈与をしておくことが、相続税に対する節税対策になり得ると言われています。
実際、上手く贈与を行うことで節税効果は期待できます。
しかしルールを把握して適切に行わなければ意味がありません。

そこで以下では生前贈与に関して注意すべき「生前贈与加算」のことを説明していきます。

生前贈与がなぜ節税になるのか

まず、生前贈与がなぜ節税に効果的なのか簡単に解説しておきましょう。

相続税は、相続に際して発生した財産の移動に対して課税されるものです。
取得する人、財産の内容・種類、価額の大きさなどによって細かく計算方法が決まっており、場合によっては数千万円もの納税義務を課せられることがあります。

相続税の額を小さくするには、各種控除制度を活用することも重要ですが、根本的な対応策としては相続財産自体を小さくすることが重要であると言えます。
ここで役に立つのが「贈与」です。
贈与もその額が大きすぎると贈与額に応じた課税がなされてしまいますが、一定額までは非課税です。
そのため非課税の範囲内で贈与を行い、相続時に移動する財産を小さくすることで、相続税も小さくできるという仕組みになっています。

なお「生前贈与」は、特に相続を見越したときの贈与を指して呼ぶ言い方で、一般的な贈与と異なる性質を持つものではありません。

直前の贈与で節税はできない

一定範囲内で贈与をしておけば相続税を安くできるということでしたが、相続税を免れる目的で行った贈与が無制限に認められてしまうと、他の納税者との間で不平等が生じるとも考えられます。

相続に限らず、納税に関してはこういった平等やバランスが重要視されますので、あまりに釣り合いが取れない事態が起こり得る場合には、制限が設けられることが多いです。
贈与による節税が悪いことと捉えられているわけではありませんが、生前贈与に関して、相続前3年以内になされた贈与は相続税の計算に含めるという措置が取られています。
これが「生前贈与加算」です。

そうすることで、死期を悟った被相続人または周囲の人が急に贈与を初めて課税を免れるという事態を防いでいるのです。

生前贈与加算がされないケース

生前贈与加算が行われる者は「相続や遺贈によって財産を取得した者」に限られています。
そのため相続に際して何ら財産を取得していない者に関しては直前に生前贈与を受けていたとしてもこの計算の対象外となります。

例えば、被相続人の配偶者や子は対象となる一方で、孫や子どもの配偶者、相続人以外の者は対象外です。

このことから言えるのは、子に対する贈与ではなく、孫に対して贈与をすることがより有効な節税対策であるということです。

ただ、孫が常に対象外になるわけではなく、孫が相続・遺贈によって財産を取得するのであれば生前贈与による節税効果はなくなるため注意しなければなりません。
例えば当該孫の親がすでに死亡している場合などです。このときには、代襲相続によって孫が親の立場を承継し、相続人として扱われるのです。つまりこの場合には孫であっても、子が財産を得た場合と何も違わないということになります。
遺言で孫に対して財産を与える旨記載しているケースも同様です。

贈与税をすでに納めている場合

相続の前3年間が対象範囲になるということで、すでに生前贈与に関する贈与税を納めてしまっていることもあるでしょう。
この場合には二重課税にならないよう「贈与税額控除」の仕組みが設けられています。

年間110万円を超える贈与をしているのであれば贈与税を納めているはずですので、これを調整するため、納付額は、相続税の計算にあたって控除するとされています。
そのため、生前贈与加算をされたからといって、本来の状態よりも損をしてしまうというわけではありません。
この点混乱のないように理解しておきましょう。

二次相続向けの具体的な節税対策を解説!

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夫婦と子がいる家庭において夫が亡くなった場合、その財産は配偶者である妻と子に引き継がれます。これが一次相続です。
その後妻が亡くなると、もともと夫の財産であったものも含めてすべて子に引き継がれるようになります。こちらが二次相続です。

そして取得財産の価額が大きい場合には相続税がかかることになりますが、納付額を下げたいのであれば、一次相続の段階において二次相続対策をすることが大切になります。
以下ではその具体的な節税対策を解説していきます。

親子で同居、もしくは二世帯住宅にする

二次相続で問題になるのは配偶者控除が使えないということです。
配偶者控除では実質すべての取得財産を非課税にできるケースが多いですが、その控除に頼り過ぎると二次相続で子にかかる税負担が大きくなりすぎるのです。
そのため一次相続時に、良いバランスで子と配偶者で遺産分割をすることが重要になります。

また、配偶者控除に並んで効果の大きな控除制度が「小規模宅地等の特例」です。
これを適用させることができれば、自宅の敷地に関して最大80%も控除を受けることが可能となります。

例えば同居している子がおり当該制度が使えるとするなら、配偶者は一次相続において土地を取得せず、子が取得しておいたほうが節税できる可能性は高いです。

ただ注意が必要なのは、適用を受けるためには「同居していなければならない」という条件の存在です。
子が自立しており、被相続人の自宅とは別に住所を持っている場合には適用させられない可能性が高くなります。
ただ、要件を満たす二世帯住宅であればここでの同居として扱ってもらえるため、もしも将来的に二世帯住宅も検討しているのであれば、節税対策も視野に入れて計画的に話を進めると良いでしょう。
区分所有として登記されてしまうと適用できなくなってしまいますが、構造上の区分、例えば居住スペースが分離されていることに関しては問題ないことが多いため、工事をする前にしっかりと専門家のアドバイスを受けておくようにしましょう。

生前贈与で非課税に

生前贈与は相続一般で有効とされる節税対策です。
二次相続においても有効です。

ただし注意点が2点あります。

  1. 贈与税がかからない範囲で行うこと
  2. 相続の直前にした贈与は対策にならない

贈与の額は年間110万円以内に抑えなければなりません。相続税がかからなくても贈与税がかかってしまい対策の意味がなくなってしまうからです。
そのため財産が多い場合には長期的に少しずつ贈与を行うと良いでしょう。

また「生前贈与加算の制度」もあるため、相続の直前、具体的には3年以内にした贈与に関しては意味がなくなってしまいます。
あまりに直前の贈与は、相続税から逃れるためにしたものとして、結局相続税の計算に含まれてしまうのです。
そのためいずれの観点から言っても、計画的に、早めに生前贈与をしておくことが大切であると言えるでしょう。

養子縁組で法定相続人を増やす

二次相続では一次相続に比べて法定相続人が減るため、結果として基礎控除額が減るという問題もあります。
そのため課税額が増えてしまいます。

この部分に関しては、養子縁組をすることで対策できます。
ただし実子がいる場合、養子縁組によって子を増やしたとしても、基礎控除の計算上法定相続人として含めることができる養子は1人までと定められています。
つまり、養子縁組を大量に行い全額非課税にするといったやり方は認められません。

生命保険に加入する

生命保険に加入すると、将来の相続財産から保険料を支払うことになり、その契約内容に応じた額が死亡後に返ってくるため、節税対策として有効と言えます。

ただし一定額以上は保険金も「みなし相続財産」となってしまうため、無限に非課税にできるものではないということに注意が必要です。

二次相続とは何か!一次相続との違いや特徴、税制面で注意すべきことを解説

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相続の際、財産の価額が一定以上に達すると相続税の課税対象となります。
数百万円、場合によっては数千万円かかることもあり、特に資産家などの相続では課税対策をすることが重要になってきます。
ただここで難しいのが「今まさに直面している相続問題に対して最適化した節税をしたとしても、長い目で見ると損をすることがある」ということです。

これが二次相続の重要なポイントです。
そこで以下では、二次相続対策をするのであればどのようなことに配慮する必要があるのか解説していきます。

二次相続とは何か

最初に「二次相続」そのものの説明をしておきましょう。

二次相続とはその名の通り、これと対になる一次的な相続の存在が前提となります。
例えば、夫Aとその配偶者である妻B、そしてABの子であるCとDがいる家庭を想定してみましょう。このときAが死亡し、相続が開始されると、Aの財産はBとCおよびDに相続されます。この相続を「一次相続」と呼びます。

さらにその後配偶者であるBも死亡すると、その財産は子CとDに相続されます。こちらが「二次相続」になります。

相続税の観点から言うと、ここで最も着目すべきは「配偶者が存在するか否か」です。一次相続と二次相続の大きな違いは配偶者の有無にあります。

二次相続対策の重要性

配偶者の存在が相続税にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

相続財産のうち課税価格は2億円とし、分かりやすく以下の2つのパターンで簡単に比べてみます。

  • 1つは一次・二次相続の双方において法定相続分に従って各々に取得させるパターン。
  • もう1つは一次相続で財産をすべて妻に取得させるパターンです。

 

一回の相続だけを考慮するのであれば、実は妻に多くの財産を取得させた方が得になります。なぜなら配偶者控除という非常に効果の大きな控除が利用できるからです。

 

上の例に従った一次相続における比較ですが、計算式などは省いて結果だけを言うと、前者のパターンでは相続税額がBとC・D合わせて1,350万円になります。
一方、後者のパターンでは540万円となり、誰にどれだけ取得させるのか工夫するだけで800万円以上納税を免れられるということが分かります。

 

ただ、その後二次相続が発生した際、前者のパターンではすでに子もある程度財産を取得しているため税額は620万円で済みますが、後者のパターンでは大きな財産移動を伴うため、2,878万円も課税されてしまいます。

これらを合計すると、前者では1,970万円、後者で3,418万円となり、結果的に一次対策だけをしたときには約1,500万円も損をすることになってしまいます。

注意すべき控除

前項の例では、大きな差が生じましたが、これは一次相続において配偶者控除に頼り過ぎた結果です。この控除では少なくとも1億6,000万円までは納付する必要がなくなりますが、フルに活用すると、二次相続において当該控除が使えない、子だけが大きな財産を引き継ぐことになり、大金を納税しなければならなくなります。

具体的な金額は、取得金額に応じた税率を使って計算することになり、この税率は取得金額が増すほど大きくなるため、一度に一人が取得する金額は小さく設定した方が納付額は下げることができるのです。

また、自宅の土地を持っている場合には「小規模宅地等の特例」も減額効果が大きいため要チェックです。
被相続人等が使っていた宅地等は、一定要件を満たすことで最大80%も減額される、という制度です。
一緒に住んでいる者であれば適用できる可能性が高いため、二次相続も考慮した上で土地の取得者を検討しましょう。

なお「基礎控除」は法定相続人の数に応じて変動するもので、基本的にこの部分で対策を取るのは難しいですが、養子を取るなどの対処方法も存在します。