遺言執行者が注意すべきことと相続人との関係

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近年の法改正により、相続に関する規定も色々と変わっています。

「遺言執行者」に関しても例外ではなく、法的地位の明確化や権限に関する規定が新たに設けられました。

何のために存在し選ばれるのか、どんな効果を誰に及ぼすことができるのか、そしてどのような権限を行使できるのか、といったルールが色々と決まっています。

もちろんそのルールに従わなければトラブルに発展するかもしれませんし、訴訟を提起されるかもしれません。

まずは何者なのか簡単に説明し、選ばれた場合、手続を進めていく上でその者が注意すべきことなどを解説していきます。

ぜひ参考にしていただければと思います。

遺言執行者とは

ある亡くなった者が遺言を残しているとき、「遺言執行者」が選任されることがあります。

その名の通り遺言を執行する者であり、遺言に記された内容を忠実に実現することを仕事とします。

遺言の内容を実現するための権限を持つ

民法で執行者の権利義務を明確にしています。

要約すると「遺言通りの内容を実現するために必要な行為をする権限を有する」とあります。

この規定は近年の法改正によって明確化されたもので、注視すべきは相続人を満足させるために一連の手続を執行する訳ではないということです。

相続財産の管理やその他の行為も、全体の利害を意識しその調整をするといったことは目的とされていません。あくまで遺言を実現することが責務とされます。

この内容は判例によってすでに出されていた答えですが、これを条文上に明らかにしました。

相続人に対する効力

かつて相続人を代理する者とみなす旨規定されていました。

しかしこの条文も書き換えられ、執行者のした行為は相続人に対し直接効力を生じる、と意味が明確に記されることとなりました。

条文でこう規定しているように、執行者はただ遺言通りの内容を代わりに行うだけではなく、その行為がすべて相続人に対し直接影響する重大な立場であることを理解することが重要です。

そのため責任をもってその職務を全うしなければなりません。

特に以下の注意点には配慮が必要でしょう。

遺言執行者に選ばれた時の注意点

執行者に選ばれた場合、これをさらに別の者へ任せるのも可能です。

しかしトラブルが生じた際の責任問題に関しては理解しておくべきでしょう。

さらに職務を執行する上では、後述する相続人への通知義務も忘れてはいけません。

復任する場合

選任された者は、すでに亡くなった被相続人との間に特別の関係性があることを前提に、簡単に復任することができないとする運用がなされていました。

しかし法改正によって原則復任はできるものと変えられ、負担は軽減されます。

これは選任されたとしても法律の知識が足りないことが珍しくなく、十分な執行が期待できない場合もあるからです。

ただし復任は自己責任で行うこと、とも定められており、被復任者がミスを犯したときには本人が責任を取らないといけない事態も起こり得ます。

やむを得ない事由がある場合には責任は限定されますが、復任には慎重であるべきでしょう。

相続人への通知

民法では、執行者が任務を始めた際には相続人に遺言に記載されている内容を通知しないといけない旨規定されています。

これは、相続人に対する利害に配慮をした結果の規定です。

上述の通り執行者の行為はすべて相続人に影響しますし、その行為を相続人は妨げることが許されていません。

相続する人は原則執行者に逆らった行いができないうえに重大な利害関係を有するため、せめて遺言の内容は通知することと定められているのです。

選ばれた者は相続人に配慮し、しっかりとこの通知義務を果たすようにしましょう。

相続人との関係

前項で少し触れたように、相続人は執行者の行為を妨げることができません。

民法では「遺言の執行の妨害行為の禁止」として規定が設けられています。

そしてこれに違反した行為は無効になるとの定めもあります。

 

ここで問題となるのが、第三者が巻き込まれている場合です。

遺言に逆らって財産の処分等をした場合、この行為が絶対的に無効であるとすれば、利益を受けた第三者が損をすることがあります。

 

かつてはこの場合でも絶対的無効であるとの運用がなされており、第三者を保護することはできない状態でした。

しかし法改正により、何も知らない第三者であれば保護される旨が規定されました。

つまり第三者がいる場合にはなかったことにできないことになります。

 

また同条では、執行者がいても債権者は相続財産に関して権利を行使できるともあります。

つまり、相続人との関係においては絶対的に執行者の権限が優位となる一方で、何も知らない第三者や債権者との関係においては原則通りにはいかないということです。

まとめ

遺言を実現するための権限を持つ者が遺言執行者です。

相続人との関係においては、その者が抵触する行為をしてもこれを無効であると主張することができます。

ただし遺言の内容に関しては通知をしなければなりませんし、復任の際には自己責任であることを覚えておかなければなりません。

また第三者や債権者が絡む問題では、遺言の内容通りに進められない場合もあるでしょう。

選任された場合には、弁護士や行政書士などの専門家に相談して手続をすすめるべきです。