相続人以外でも介護等の労務に対する特別寄与料がもらえる

 

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特別寄与料の仕組み

事例)Aに父Xと、配偶者B、子Cがいる場合を考えます。
Xが亡くなり相続が開始されましたが、BはXの療養看護に献身的に当たってくれたという事情があります。
そのためXの相続に関しBを考慮することはできないか?という問題です。

 

まず、前提として整理しておきたいのはこの場合の配偶者Bは相続人ではないということです。
そのためXの財産がBに流れることは基本的にありません。

 

しかし近年の法律改正により、Bにも一定の権利が認められる可能性も出てきています。

生前に貢献した者への救済

特別寄与料の仕組みが設けられています。

介護など、労務を提供したことによって被相続人の財産に特別の寄与をした親族は、それ相応の金銭の支払を請求できるという内容です。
ただし相続欠格者や廃除された者は除外されます。

 

つまり、上の事例においてBが特別寄与者として認められればCに支払いを請求することが可能となるのです。

 

ただしBの行為によって相続財産が維持もしくは増加したと言えなければなりません。
どんなことでもいいからとりあえずサポートをしていれば貰えるということではないのです。

そこで、Xとの関係性においてその貢献が一定の程度を超えたと言えるかどうかが重要になってくるでしょう。

親族の範囲

特別寄与料が認められるのは親族に限られます。
そこで親族と言えるのはどの範囲なのか見ていきましょう。
法律で厳密に定義されていますので、感覚的にその範囲を決めつけないように注意しなければなりません。

具体的には①6親等内の血族②配偶者③3親等内の姻族とされています。

例えば①に含まれるのはいとこやその孫など、③には義理の祖父母や兄弟姉妹の子、義理の親の兄弟までも含まれます。

 

こうして考えると、かなり広い範囲が該当することが分かるかと思います。

特別寄与に関するポイント

支払を請求できる期間には制限がある

当該規定による請求をすることで、生前介護などをしてきた親族が金銭を求めることができるようになります。

しかしこの支払に関して話し合いをしてもまとまらない可能性があります。

トラブルに発展してしまうおそれもあるでしょう。

そこで家庭裁判所へ、処分を求めることができるというルールも作られています。
どうしても話が付かないというのであれば家裁に判断をしてもらうことで解決できるのです。

 

しかしここで注意したいのは期間の制限です。

請求をできる期限を設けていないと様々な問題が生じてしまいますので、法律上も期間に制限を設けています。

 

具体的には、「相続開始と相続人を知ったときから6か月以内かつ「相続開始から1年以内です。
つまり最長でも1年です。相続が始まっていることを知らなかったとしても、1年を経過してしまったのであればその後請求はできなくなります。

 

そこで、誰が相続人なのか分からないまま期間が過ぎた場合を考えてみましょう。
相続開始から8か月経過して相続人を知った場合、そこから6ヵ月丸々の猶予は与えられず、残り4か月以内に請求をしなければその権利を失うことになります。

 

なお、家裁への請求後、具体的な金額に関しては家裁が裁量で決めることになります。

このケースでは自由に金額を設定することはできません。

対象者は親族だけ

前述の通り、特別寄与者となれるのは親族だけです。

当該規定によって、相続人ではない者でもその貢献に応じた金銭を受け取ることができるようになっていますが、どこまでもこれを認めてしまうと様々な弊害が生じてしまうからです。

例えば何の身分的な関係もない者を請求権者として認めてしまうと、支払いに関し紛争が複雑化し、問題解決まで時間がかかってしまう可能性が出てきます。

 

これに対し、親族の場合には介護等をするにあたって事前に契約を締結しておくなどの行為をするケースがあまりなく、救済の必要性が高いと考えられています。

遺贈のほうが優先される

相続が開始されるシーンでは、遺贈が発生していることもあり得ます。
この場合には特別寄与料はどうなるのでしょうか。

 

このときのルールに関しても規定が置かれています。
そこには、「財産から遺贈分を引いた残額を超えることはできない」と定められています。

つまり遺贈分が割合大きく、それ以外の財産が小さければ特別の貢献をしていたとしても受け取れる金銭はそれだけ小さくなってしまうということです。

 

なぜ遺贈のほうが優先されるのかと言うと、これは亡くなった人の意思表示によるものだからです。

相続人の負担割合

貢献をしていた者は、相続人に対しまずは請求をします。
相続人が1人であればそのままその者が負担をすることになりますが、複数人いる場合には全員で負担をすることになります。

 

ただしその負担割合は相続分に応じるとされています。

全額を人数分で分け、一律で負担をするわけではありません。

まとめ

かつては相続人にだけ「寄与分」が認められていましたが、近年「特別寄与料」として親族にまで範囲を広げた制度ができています。

これにより特別の貢献をした者が金銭を請求できるようになりました。

ただし、あくまでも請求権者になり得るのは親族だけということには注意が必要です。