相続開始後、相続人の債権者あるいは被相続人の債権者から「財産分離」の請求を受けることがあります。これは相続財産と相続人の財産が混ざることによって債権が満足に回収できなくなるリスクを避けるために行われるものです。
請求の手続は債権者側で行うのですが、この場合、相続人はどのように対応していかないといけないのでしょうか。
以下で解説していきます。
単純承認したときと同様に財産を管理する
民法第944条には、財産分離の請求を受けた後の財産管理義務について規定が置かれています。
同条によると、相続人は、単純承認のときと変わらず、「固有財産におけるのと同一の注意」をもって管理しないといけません。
要は自分の財産を管理するのと同等の水準で管理をすべきということです。
財産分離の請求を受けたからと言って債権者に管理を任せるわけではありません。
一定の債権者に対し優先的に弁済する
この請求を家裁が認めて財産分離を命じた場合、その請求を受けた債権者や、その請求後、配当加入の申出をしてきた債権者は分離した財産につき優先弁済を受けることができます。
逆に言えば、相続人は相続によって得た財産をもともと自分の有していた債務の弁済に充てることはできません。
また、相続によって引き継いだ債務を弁済するためにもともと自分が有していた財産を使ってはいけません。
前者は相続債権者から請求を受けたケース(第一種財産分離)、後者は元から自身の債権者であった者が請求をしたケース(第二種財産分離)です。
財産分離の請求防止、効力を消滅させる方法
財産分離の請求を防止したり、その効力を消滅させたりする方法があります。
例えば相続債権者が請求をしてきた第一種財産分離においては、相続人固有の財産をもって弁済をすることに問題はありません。
請求者は自らの権利を行使できればそれで良いからです。度の財産から弁済を受けるのか、ということは通常求められません。
そのため相続財産に手を付けたくない場合、相続人は固有財産によって弁済をすれば良いのです。請求を防止することができ、請求後でも効果を消滅させられます。
相当の担保を供与してもこれと同じ効果が得られます。
ただ当然ですが、相続人に債権者がいて、これをすることによって損害を受けることがあります。
そのため当該債権者が損害を受けることを証明して異議を述べてきたときには、この効果は得られませんので注意したいものです(民法第949条但書)。