遺産分割協議書を作成するメリットやデメリットとは?

 

 

相続手続の1つに「遺産分割協議」があります。遺産を誰が取得するのかを話し合うことを指します。そしてこの協議に際して作成されるのが「遺産分割協議書」です。
これを作成することにどんな意味があるのでしょうか。ここでメリット・デメリットを紹介しますので参考にしていただければと思います。

 

遺産分割協議書を作成するメリットについて


遺産分割協議書を作成することで、遺産分割の内容を正確に記録できるようになります。これはメリットの1つといえます。

遺産には様々な種類の財産が含まれており、それらを細かく分けていく場合には情報が錯綜し、誰が何を取得したのかがわかりにくくなるおそれがありますので、正確に記録する必要性があるのです。

遺産分割協議書を作成することで、誰がどの財産をどのように引き受けたのか、どのように分割したのかといった情報が明確になります。

 

さらに、遺産分割協議書は、争いを解決する証拠としての役割も果たします。
遺産の帰属先を明らかにすることで、後々「その財産は私が取得したものだ」「そんな話し合いはしていない」といった揉め事を回避しやすくなります。

訴訟に発展した場合にも、遺産分割協議書を証拠として活用することで、迅速に解決することができます。

 

さらに、遺産分割協議書を作成することで、各種相続手続きがスムーズに進むようになる、というメリットも得られます。

例えば遺産分割協議により取得した財産の中には、その後名義変更手続を要するものもあります。


例えば不動産を取得したとき、名義変更として登記申請を行います。このような手続きにおいて、遺産分割協議書は、取得財産の内容を明確にし、各種手続きを円滑に進めるための重要な資料となります。

 

遺産分割協議書を作成するデメリットについて


デメリットの1つは「作成に手間がかかる」という点です。

遺産分割協議書の作成には、「氏名」「本籍」「住所」「亡くなった日」などの情報、その他相続人に関する情報や分割内容などをまとめないといけません。

「専門家に依頼するときにコストがかかる」というデメリットもあります。
遺産分割協議書の作成には専門知識が必要で、司法書士行政書士、弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。


しかし、依頼するときに数万円以上のコストが発生します。費用対効果を考慮すれば大きなデメリットとも言えますが、費用の負担がかかるということは覚えておく必要があるでしょう。

 

デメリットもあるが遺産分割協議書は作成しておくべき


メリット・デメリットを挙げましたが、ほぼすべてのシチュエーションで“遺産分割協議書は作成すべきものである”と言えます。

作成しないことのリスクが大きく、それに対する作成のデメリットが釣り合っていないからです。
作成できていないことで、後々大きなトラブルに発展する可能性もあります。これを防ぐためにも、必ず作成するようにしましょう。

 

遺言書の種類別にメリット・デメリットを紹介!

 

 

遺言書にはいくつかの種類があります。それぞれ作成方法が異なり、メリットやデメリットも異なっています。
「遺言書の種類について知りたい」「各遺言書にどんな違いがあるのか知りたい」という方はぜひ参考にしてください。

 

自筆証書遺言のメリットとデメリット


自筆証書遺言には、次のようなメリットがあります。

まず、自分自身で簡単に作成することができるため、専門家に依頼する必要がありません。作成に伴う費用もほとんどかかりません。
さらに、遺言書の内容や存在を秘密にすることができます。

 

一方で、自筆証書遺言には、以下のようなデメリットが存在します。

まず、不備がある場合、遺言書が無効になってしまうリスクがあります。
また、作成後に紛失や改ざんなどのリスクがあるため、遺言書の保管には十分な注意が必要です。
さらに、遺言書が見つからない場合、遺言者の意図と異なる相続が行われる可能性があります。

遺言書の有効性を確認するために検認手続が必要であるという点もネックです。

 

遺言書の有効性を確認するためには、検認手続が必要ですが、法務局で実施している保管制度を利用することで、紛失や改ざん、未発見のリスクを軽減することができます。

 

公正証書遺言のメリットとデメリット


公正証書遺言には、以下のようなメリットがあります。

まず、適切な形式で遺言書を作成できるため、遺言書の有効性に関するリスクが少なくなります。
また、遺言書の存在が公証人によって証明されるため、遺言書の存在を周囲に知らせることもできます。


さらには、遺言書の保管についても遺言者自身が行う必要がなく、安心して任せることができます。検認手続が不要ですし、相続人にとっては手続の煩雑がない点がメリットにもなります。

 

ただし、公正証書遺言には以下のようなデメリットもあります。

まず、証人が存在するため、証人から遺言内容が漏れるリスクがあります。

遺言書の存在を隠すことができないため、周囲に知られたくない場合には不向きです。
さらに、公正証書遺言の作成には費用がかかりますし、遺言者にかかる手間も大きいです。

 

秘密証書遺言のメリットとデメリット

秘密証書遺言には、以下のようなメリットがあります。

まず、遺言の“内容”を誰にも知られずに作成ができるという点が挙げられます。
また、自書が必須ではないため、パソコンで手軽に作成することも可能です。
公証人に対する費用が少ないとも利点といえるでしょう。

 

一方、秘密証書遺言には、以下のようなデメリットがあります。

まず、公証人役場での手続きが必要であり、証人を2人同席させないといけない点が挙げられます。
遺言書が発見されないというリスクもあります。


また、遺言書の内容は知られないものの、遺言書の“存在”については知られてしまう可能性があります。ご自身が遺言書を作ったこと自体も知られなくない方には、不向きといえます。

 

不動産相続によるトラブルを防ぐポイント!対策内容を紹介

 

 

不動産相続では、相続税の負担が大きくなりやすいですし、相続人間で平等な遺産分割をするのも難しくなってしまいます。取り合いになりも揉めることもあるでしょう。


相続をきっかけに家族仲・親族仲が悪くなるおそれもありますので、できるだけトラブルが起こらないように対策を練る必要があります。

 

ここで「不動産相続におけるトラブルを防ぐポイント」を紹介しますので参考にしてください。

 

生前の家族会議


事前によく話し合っておくことでトラブルを防げることもあります。


不動産の所有者も交えて話し合うことで、不動産の将来的な所有者についての納得も得られやすいです。

不満のある内容であっても、相続開始前から認識しておくことで揉めるリスクを下げることができます。

 

また、不動産を取得する人物としてはあらかじめ自分が取得するものと認識しておくことで様々な準備が進められます。

評価額を調べておけば、おおよその相続税も把握できますので、税負担への備えができます。

 

遺言書の作成


遺言書で不動産の取得者を指定しておけば、取得をめぐる争いも防げます。

遺言内容には法的な拘束力も生じますので、一部の相続人が「納得できない」といってもその主張を退けることができます。

 

ただし法令に則って適切に遺言書は作成されなければいけません。

間違った方式で作成していると、「その遺言書は無効だ」との主張をされてしまうことのリスクが高まります。

法律の専門家のサポートを受けて、ミスのないように遺言書は作成しましょう。

 

不動産を売っておく


相続が開始する前の時点では、不動産の所有者がどう扱おうが自由です。

そのため不動産をめぐるトラブルが予想されるとき、これを売却しておくのも一つの手です。

売却して現金化しておけば、平等に分割することができますし、相続人にかかる手続の手間なども削減することができます。

 

ただし、不動産の場合に適用できる税制上の特例が利用できず、税負担が増す可能性もあります。税理士に相談して売却をすべきかどうかの検討を進めましょう。

 

現金や預貯金を備えておく


不動産が唯一の遺産、あるいは不動産が遺産総額の大半を占めていると、遺産分割でトラブルが起こりやすいです。

 

そこで売却をするのを避けたいときは、被相続人となる方が現金や預貯金など分割しやすい財産も多めに残しておくよう努めましょう。


現金等が多く残っていれば、平等な遺産分割が実現されます。

また、相続税の納税にも耐えることができ、泣く泣く不動産を売却するという事態も避けやすくなります。

その他対策については、様々な専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。

 

不動産相続でよくあるトラブルとは?遺産に建物や土地があるときは要注意

 

 

遺産をめぐって、相続人や親族間でトラブルが発生することがあります。

「私がこの土地を取得したい」「よくお世話をしていたのだから多くの遺産をもらう」などと様々な要因で揉めることがあります。


特に不動産が遺産に含まれているとき、取り扱いが他の財産よりも複雑化し、トラブルが発生しやすいです。

具体的にどのようなトラブルが起こるのか、以下で紹介していきます。

 

自宅や土地の取り合いによるトラブル


被相続人が住んでいた家を誰が取得するのか」という点でトラブルが起こる可能性があります。

 

また、土地に関しては家屋と異なり経年劣化するものではありませんし、高い価値を有している可能性も高いです。

立地が良い土地だとその後賃貸物件などとして利用することもできますし、収益を生むことも可能です。

そのため取り合いが生まれる可能性があります。

 

平等な遺産分割ができないことによるトラブル


仮に遺産のすべてが現金であったとすれば、相続人間で平等に分割するのは簡単です。

 

しかし不動産しか遺産がないとき、複数の相続人で平等に分けることは難しくなります。

唯一の物件を取得した人物のみが資産を取得でき、他の人物は一切の遺産が受け取れないこともあります。

 

そこで共有名義で所有するという方法もありますが、このとき将来的に処分をするとき、意思決定が上手くできずトラブルになることもあります。

 

代償分割という、不動産の取得者が、現金を他の相続人に代償金として支払うことで平等にする方法もあります。

 

しかし取得者が相当に現金を持っていなければ現金の負担に耐えられません。


あるいは換価分割という方法もあります。

不動産を売却し、その対価を相続人でわけるのです。

このとき平等に遺産分割できますが、売却するまでに時間がかかるのと、不動産を残せないというデメリットがあります。

 

相続税の負担が大きくなることによるトラブル


不動産はそれ単体で大きな価値を持つ財産です。

そのため相続税の負担も相応に大きくなります。

現金や預貯金がたくさん残っているときは税負担が大きくてもそれ以上の金銭を受け取っているため大きな問題にはなりません。

一方で不動産を取得したときは、それを売却しないと現金化できず、税金については取得者がもともと持っていた現金で対応しないといけません。

 

「残したい不動産があるものの、相続税の納税ができなから手放す」という事態も起こり得ます。


そんなときは税理士などに相談し、評価額を下げる特例などを活用しましょう。

どうすれば不動産を残しつつ納税ができるのか、的確なアドバイスが受けられるでしょう。

 

みなし相続財産とは?具体例と相続税との関係について

 

相続財産に対しては基本的に相続税が課税されます。

ここでいう相続財産とは民法上の、純粋な相続財産のことであり、要は被相続人が持っていた財産を指しています。


一方、被相続人が持っていたとまではいえないものの、相続財産と同等に取り扱う「みなし相続財産」という概念もあります。

相続税の計算過程で重要になってきますので、ここで整理しておきましょう。

 

みなし相続財産とは


みなし相続財産とは、その名の通り、本来相続財産ではないところ「これを相続財産であるとみなす」財産のことです。

 

本来の相続財産とは、被相続人が持っていた現金や預貯金、不動産、有価証券などの幅広い財産のことです。基本的にはこれらすべてが相続税の課税対象となります。

 

これに対して、相続開始前において被相続人の管理下になかった財産(所有していなかった財産)は原則として相続の対象外です。


ただ、相続税課税の観点からは、実質において被相続人の財産と同等に扱えるものもあるのです。

 

生命保険金(みなし相続財産の例1)


みなし相続財産の代表例の1つが「生命保険金」です。

 

被相続人が被保険者であり、保険料の負担者でもあったケースでみなし相続財産となります。

 

このシチュエーションでは、のちに相続財産となりうる現金等が保険料として納められ、死後に保険金として形を変えて相続人等が取得することになります。

 

経路が異なるだけで、実質被相続人の財産が死亡をきっかけに相続人らに移ったととらえることもできるでしょう。そこで相続税の計算に含めるとの取り扱いがなされています。

 

ただ、その全額が課税対象になるわけではありません。

そもそも「納めた保険料=受け取れる保険金」の関係にはなりません。

そこで、非課税枠が設けられています。

500万円×法定相続人の数

で非課税枠の大きさは定まります。

法定相続人が3人いるときは、生命保険金を受け取ったとしても、1,500万円までなら非課税とすることができます。

 

死亡退職金(みなし相続財産の例2)


退職するとき、勤続年数等に応じて退職金が支給される企業もあります。

死亡により退職するケースもあり、その場合には死亡退職金として遺族に退職金が渡されることもあります。

これも、死亡から3年以内に支給が確定した分については、みなし相続財産として相続税の課税対象になりますので要注意です。

 

なお、こちらも生命保険金同様に非課税枠が設けられています。

500万円×法定相続人で算出される額までなら非課税にできます。

 

相続税の計算をするときは、ここで紹介したみなし相続財産についても忘れないようにしましょう。

 

相続人の順位とは?法定相続分との関係などを解説

 

 

相続人になれるかどうかは「順位」という概念が関係しています。そしてこの順位に応じて各人の遺産の取り分を左右する「法定相続分」も決まってきます。


この記事で、順位およびそれに連動する法定相続分に関して解説をしていきます。

 

相続人の順位とは

亡くなった方の家族・親族であれば誰もが相続人になれるわけではありません。
相続人になる人物は民法により定められています。

 

また相続人となる人物も常に固定ではなく、「順位」に従い優先度が定められていますので、順位の高い者から順に相続人となる権利を得ることができるのです。

 

第1順位から第3順位の人物

まず、亡くなった方の“配偶者”は常に相続人となる権利を得ます。特殊な立場にあり、順位を気にする必要はありません。以下のどの順位の者が相続人となる場合でも共同相続人となることができます。

 

ではまず第1順位からですが、これには“”が該当します。
そのため亡くなった方に子がいる場合は、配偶者と子が相続人となり、後順位の方は相続人となれません。

 

続いて第2順位には“直系尊属”が該当します。
亡くなった方の親や祖父母のことです。子がいない場合に相続権を得ます。

 

そして第3順位が“兄弟姉妹”です。
子も親などもいない場合に亡くなった方の兄弟姉妹が相続権を得ます。

 

なお、子がいないといっても、その子の子(亡くなった方の孫)がいるのなら代襲相続により第1順位として孫が相続人となる点には留意しましょう。

 

順位と法定相続分について

配偶者と第1順位の者が相続人となる場合、それぞれ遺産の2分の1を取得する権利を得ます。
第1順位の者が複数人いる場合には、2分の1をさらに分割します。配偶者は1人で2分の1の遺産を取得します。

 

これに対し第2順位の者が相続人となる場合は、配偶者が3分の2、第2順位の者らで3分の1を分割します。

 

第3順位の者が相続人となる場合は、配偶者が4分の3、第3順位の者らで残りの4分の1を分割することになります。

 

このように、同じ相続人という立場でも、順位によって取得できる財産の割合は大きく異なります。ただし遺産分割協議で全員の同意があれば、この割合と異なる形で相続することは可能です。

 

遺留分にも影響する

一定の相続人には、生活保障の目的で遺留分と呼ばれる遺産の取得割合が法定されています。

遺言書により「三者に全財産を渡す」と指定されていても、遺留分に限っては請求することができるのです。

 

ただしここでも亡くなった方との続柄により割合が異なります。


配偶者や子に関しては法定相続分の2分の1が認められます。直系尊属はより少ない割合でしか認められず、兄弟姉妹にいたっては一切の遺留分が認められていません。

 

法定相続分にしろ遺留分にしろ、亡くなった方との関係が遠くなるほど取得できる割合が少なくなると覚えておくと良いでしょう。

公正証書遺言作成の必要書類と費用を紹介します

 

 

遺言書には遺言者1人で作成ができる「自筆証書遺言」とは別に、公証役場で作成を行う「公正証書遺言」というものがあります。


公証人が作成してくれるため法的に有効な遺言書とできるなどの利点があるのですが、手続を進めるために必要書類の準備が必要となりますし、費用の支払いも欠かせません。


そこでこの記事では、公正証書遺言の必要書類と費用に焦点を当てて紹介をしていきます。

 

公正証書遺言作成の必要書類

遺言書は自らの財産の行方、相続人らの権利に影響を及ぼす存在であり、とても重要な役割を果たします。
そのため身分関係などは事前にしっかりとチェックする必要があります。

 

その観点から提出を求められるのが次のような書類です。

 

  • 印鑑証明書やマイナンバーカード、運転免許証などの(遺言者)本人が確認できる資料
  • 相続人との関係性が記されている戸籍謄本
  • 遺言書により財産を受け取ることとなる受遺者の住民票
    ※法人を受遺者とするときはその法人の登記簿謄本を用意する

 

「受遺者の住民票」に関しては、相続人以外が遺産の受取人となる場合に必要となるものです。

このように、状況に応じて必要な書類は異なり、何より財産の内容に応じても準備すべきものは変わってきますので留意しましょう。


例えば不動産を遺言書により誰かに与える場合には「固定資産税納税通知書」や「固定資産評価証明書」、そして「登記事項証明書」を用意しなければなりません。

 

また、公正証書遺言の作成にあたっては証人を2人以上用意しなければなりません。
そこで証人それぞれに関しても、氏名・生年月日・住所・職業がわかる資料の準備が求められます。

 

公正証書遺言作成で負担する費用

公正証書遺言は公証人という法律のプロが作成手続に関与します。そこでこの公証人に対して手数料の支払いが求められます。
その価額は遺言書に記載する財産の価額に対応します。

 

例えば財産の価額が100万円以内なら5,000円。200万円以内なら7,000円。500万円以内なら11,000円といった形で増加していきます。
※詳しくは公証人手数料令第9条別表に記載

 

また、一般的には弁護士や司法書士行政書士などの専門家に相談して遺言書への記載内容などは決めていきます。


そのためそれら専門家への相談料・依頼料が発生します。依頼先により異なりますが、遺言書の作成に限れば20万円ほどが相場とされています。

 

その他、上記必要書類の準備に必要な若干の手数料も発生します。

 

戸籍謄本の取得なら1通あたり450円。住民票の取得なら1通あたり300円。その他数百円レベルの費用が複数出てきます。こちらの費用は、合計してもそれほど大きな負担にはならないでしょう。

包括遺贈をするときどんなことに注意が必要?遺言書作成の前に知っておくべきこと

包括遺贈をすることで一挙にすべての財産を特定の人物に渡すことができます。

親しい友人がおりその方に財産を与えたいという場合、遺言書にその旨記載することで、相続人でなかったとしても遺産を受け取ってもらえるのです。

 

ただしトラブルを避ける上で注意すべき点があります。この記事にまとめましたので、参考にしていただければと思います。

 

包括遺贈の問題点

包括遺贈は「財産の全部をAにあげる」「財産の半分をAにあげる」といった形で、全部または割合の指定によりする遺贈を意味します。

 

遺言書への書き方としては非常に簡単で、遺言書作成者はそれほど悩むことなく作成を進めていくことができるでしょう。

ただ、「財産の全部」としてしまうと、借金なども全部取得させてしまうことになります。もちろん、あげようとしている相手方が遺贈を拒絶すれば借金を背負うことはなくなるのですが、そうすると資産に関しても受け取りを放棄することになってしまいます。

 

「財産の半分」としたとしても同じ現象が起こります。
半分の割合で借金も引き継ぐことになるのです。これら債務を大きく上回る資産があればそれほど大きな問題にはならないかもしれませんが、受遺者には手間がかかりますし、リスクであることに違いはありません。

 

またこれとは別に、「遺産分割協議に加わらなければならない」という問題も生じます。
包括遺贈ではその指定された割合で相続人と同様の権限を持つことになるため、遺産分割協議に参加することが求められます。これは受遺者にとって大きな負担です。特に相続人らとの関係性が良くない場合、トラブルに発展するリスクもあります。

 

包括遺贈をするときの注意点

包括遺贈にはメリットもある反面で、上のような問題を抱えているというデメリットもあります。

 

そこで、以下で説明することに注意して遺言書を作成することが大切です。

 

相続人との関係であまりに不平等にならないこと

相続人以外に包括遺贈をする場合、その分相続人が受け取ることができる財産が減ってしまいます。

 

遺産の受け取りを期待していた相続人からすると不満を持ってもおかしくありません。
そのため相続人と受遺者との間で対立構図ができあがってしまうおそれがあるのです。

 

こうした問題を防ぐためには、相続人のことにも目を向け、双方のバランスを考慮した遺贈となるようにすると良いでしょう。

 

遺留分の侵害がないように配慮すること

相続人とのバランスを考えるべきというのは、「遺留分侵害」という観点からも言えることです。

 

被相続人の妻や夫、子、親などの特定の相続人については、「遺留分」という相続財産の一定割合を確保する権利を持ちます。
生活保障のためにこの制度が設けられており、ごく少額、あるいは一切の財産が受け取れないときには権利者が受遺者に対して「遺留分侵害額請求」を行い、遺留分を回収することも起こり得ます。

包括遺贈とは?特徴や特定遺贈との違いを解説

遺言書を使って財産を渡すことを「遺贈」と呼びます。遺贈によれば、その相手方が相続人でなくとも、遺産を渡すことが可能となります。

ただし遺贈のやり方には注意が必要です。記載の仕方による「包括遺贈」「特定遺贈」の違いがありますので、両者の区別はできるようになっておく必要があります。ここで解説していきます。

 

包括遺贈とは

包括遺贈は「財産の全部あるいは一定の割合を、遺言書により贈与すること」を意味します。

 

そのため遺言書に「私が持っている財産はすべて子Aにわたす」と記載した場合、それは包括遺贈により遺贈をすることを指します。
全部でなくても、割合を指定したときには包括遺贈となるため「相続財産の半分は子Aに、残りの半分は子Bにわたす」とした場合も同じく包括遺贈です。

 

包括遺贈の特徴として、財産を取得する方(受遺者)に、相続人と同じ権利義務関係が構築されることが挙げられます。
全部または一定割合で財産をあげるということは、全部または一定割合の相続権をわたすといっているようなものであり、必ずしもプラスの財産を引き継ぐだけとは限らないのです。要は、その指定された割合で債務も取得する可能性があるということです。

 

特定遺贈との違い

上の包括遺贈と対になる遺贈として、「特定遺贈」が挙げられます。

 

特定遺贈は、具体的に渡したい財産を指定してする遺贈のことです。
よって、「この土地は配偶者にわたす」「預貯金1,000万円は友人Xにわたす」と遺言書に書き記した場合、これは特定遺贈をしようとしていると解釈されます。

 

具体的に財産を指定するのがポイントであり、単に「預貯金」と記載するよりも、金融機関名や口座番号なども明記しておくことが望ましいでしょう。とにかく“財産の特定”が大事です。

 

ここが包括遺贈と特定遺贈の大きな違いです。

 

包括遺贈であることの利点

遺言書の書き方により包括遺贈を指定したことになった場合、債務の取得というリスクもある反面、「特定の財産がなくなったとしても遺贈が実行できる」という利点を持ちます。

 

「この自宅をあげる」と特定遺贈をしようとしている場合、その自宅が火事によりなくなってしまうと、遺贈であげられる財産はなくなります。受遺者とするはずの人物が相続人でない場合、一切の財産が得られなくなる可能性が出てくるのです。

 

よって、特定の財産を取得してもらう特段の必要性がないのであれば、包括遺贈としておけば安心できると言えます。
遺言書を作成する本人であれば債務の存在も把握していると思われますので、そのリスクがないことを確認の上、包括遺贈という選択肢を取るのも検討すると良いでしょう。

相続人の調査には戸籍集めが必要!集めるべき資料やチェックポイントを紹介

遺産分割は、相続人全員が揃って行わなければなりません。相続人の確定ができていないにも関わらず行ってしまった協議はやり直すことになります。

そこで遺産分割に向けては、相続財産の調査に加え、相続人の調査も必要となるのです。ここでは相続人を調べるために集めるべき資料、相続人を確定するために見るべきポイントを解説していきます。

 

まずは亡くなった方の戸籍集めを始める

亡くなった方の戸籍を集めましょう。戸籍を見ることで、被相続人の親族関係などが確認できます。

 

集めるべき資料は、戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍などです。

被相続人の親や兄弟姉妹、さらには甥・姪なども調べていかなくてはなりません。婚姻により別の戸籍に入ることもありますので、過去の戸籍に遡ってチェックしていかなくてはなりません。

よって、集めるべきは、被相続人の「一生分の戸籍」ということになります。

 

戸籍集めにあたっては「被相続人の本籍地」の市区町村役場での手続が必要です。直接窓口に行っても良いですし、郵送での請求も可能です。

 

戸籍集めの必要書類

戸籍を取得するには、各自治体で運用しているフォーマットに従い「戸籍交付申請書」を作成することになります。

申請の際は、本人確認ができる書類と印鑑も持っておきましょう。これは郵送で請求するときも同じです。ただし郵送のときは返信用封筒と切手も一緒に入れて送ることになります。

 

なお、取得には数百円ほどの費用がかかります。

 

相続人を確定する

戸籍の収集後は、その記載内容から相続人の確定作業に入ります。

戸籍謄本には配偶者と子が、除籍謄本なら両親や兄弟姉妹の記載がなされています。離婚経験があるなら、別の除籍謄本に元配偶者・子の記載があります。

 

着目すべきポイント

戸籍が連続していることが重要です。

そこで、戸籍の作成日をチェックし、その1つ前の戸籍に記載の最終有効日を見てみましょう。両日が同じであれば連続していることの確認が取れます。

 

また、「改製」や「編製」の表記があるケースもあります。このときには改製日や編製日に着目して連続しているかどうかをチェックしましょう。

 

こうして作成日等の日付をチェックし、被相続人の出生にまで遡れば関係者がすべて浮かび上がってくるでしょう。

 

相続人調査は専門家に相談するのが安全

相続人の調査にあたっては、役所の窓口は平日しか開いていないこと、対応している役所が遠いと直接行くにしても郵送するにしても手続に時間がかかること、などの問題が生じます。

 

また、戸籍が集められたとしてもそこから相続人の確定作業にミスがあると遺産協議などその後の手続にも悪影響が広がります。こうした問題を解決するためにも、専門家に相談をしておくことをおすすめします。