個人事業主がすべき相続対策と手続の基本

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個人事業主被相続人となる場合、会社勤めをしていた人とは財産状況が異なり、手続が複雑になることが考えられます。

そこでまずは個人事業主被相続人となった場合の相続がどのようになるのか説明し、事業主側がすべき事前対策、相続人側がするべき手続きの基本を解説していきます。

個人事業主における相続の基本

個人事業を営んでいた人が亡くなり、相続をすることになった場合、財産の範囲で悩む人もいるかと思います。

個人の財布に入っているようなお金や預貯金等はもちろん、通常の相続と変わる点はありません。

相続人にすべて引き継がれます。

 

問題は事業用の財産です。

例えば起業をしていた場合などには、その会社が法人格を取得しており、会社の財産は個人の財産とは完全に区別されます。

これに対し個人事業ではこのように区別がなされません。

つまり、その事業主が事業用の銀行口座を作っていても、相続においてはすべて事業主個人の財産と変わりないということです。

事業用資産と明らかに分かるような場合でも関係ありません。

 

ここで気を付けたいのは、事業用の財産には相続人にとってプラスのものばかりではないということです。

事業の継続のため確保しているプラスの財産もあるかもしれませんが、取引先への支払いが残っていることや、金融機関からの借り入れがあることも珍しくありません。

これらもマイナスの財産として相続の対象となります。

個人事業主が注意すべきこと

個人事業を営んでいる人は、自身の財産を引き継ぐ者のために、事前の対策をとっておくことが望ましいです。

なぜなら上述の通り、債務を含む事業上の財産もすべて引き継がれることになり、取引先との関係もあることから複雑な手続を任せることになるからです。

行政書士などの専門家に相談することで解決できることも多くありますが、負担を少しでも軽くし、トラブルを起こさないためには事業主本人が準備しておくことが一番です。

債権債務関係の情報共有

通常の相続と異なるのは取引先が存在するという点にあります。

つまり事業上の債権債務関係が多くあるため、単にマイナスの財産が存在するというだけでなく、それらを整理していくのが大変な作業になってくるのです。

どこと、どのような取引をしていたのか、情報の共有ができるよう整理しておくようにしましょう。

そのためには顧客の名簿を作成しておくといいでしょう。

 

他にも情報共有という観点から、事業用財産の目録の作成、業務管理簿の作成などもしておくべきです。

どのような仕事を請け負っていたのかが分かることで発注先に迷惑をかけずに済みます。

事業用に利用していた口座やクレジットカードもあるかと思います。

これらのログイン情報等も共有できるようにし、相続人が財産の棚卸をする際にかかる負担を軽減してあげましょう。

遺言の作成

遺言を作成することは個人事業主に関係なくトラブル防止に役立つ手法です。

 

特に、事業主の場合、事業用資産を後継者に承継したいというケースもあります。

これを実現するため遺贈という形で承継させることも可能です。

ただし法定のやり方で間違いのないようにしなければならず、行政書士等の専門家の力を借りながら作成するようにすべきです。

法人化

株式会社などの事業主体を立ち上げることで、複雑な債権債務関係を相続させずに済みます。

毎年の利益の程度などによっては節税できることもありますので、法人化することのメリット・デメリットを考慮しながら、法人化も視野に入れてみましょう。

相続人側で必要な手続

ここまでは個人事業主が自らできる対策を説明してきました。

しかし相続人としても手続の流れを知っておくことが大切です。

特に、被相続人個人事業主であった場合の注意点などに注目しながら説明していきます。

事業用資産の把握

相続が開始されたことを知ってから、まずは相続人の調査を行います。

戸籍謄本等を取り寄せ、誰が共同相続人となるのか確認していきます。

 

その後、引き継ぐことになる財産を調査していくことになりますが、個人事業主被相続人のときには事業用資産の把握が特に重要になります。

金融機関からの借り入れ、取引先との関係においける債権や債務の存在などがあります。

従業員を雇っていた場合には賃金の支払い債務もあります。

遺産分割協議

相続人が複数いる場合、遺産をどのように分けるのか話し合いをします。

事業主であれば共同で経営をしていた者や後継となる者も存在するかもしれません。

しかしすでに説明した通り、個人事業では通常の相続と同じように親族等しか相続人にはなれません。

そのため事業用の資産でも仕事仲間等へは配分されません。

ただし遺言によって指定されていることもあるかもしれませんので、注意が必要です。

事業用口座等の解約や名義変更

引継ぎを受けた者は、取引に使われていた口座等の解約もしくは名義変更などをしなければなりません。

店舗を借りていた場合には賃借人としての立場も承継することになります。

なお、事業も引き継いで続けていることができますが、事業内容によっては許認可を要する場合もあります。

このとき、そのまま業務ができるとは限りませんので、行政書士等の専門家に相談するようにしましょう。

生命保険金は特別受益にあたるのか

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相続割合は、相続人間で話し合って決めることもできますが、何も協議をしなければ法定の相続分に応じて配分されます。

しかしこの法定相続分も、いくつかの事情によって修正がなされることがあります。

その事情の一つが特別受益の有無です。

 

そのため何が特別受益となるのか、その判定はよく問題になるところでもあります。

ここでは特に、生命保険金の受け取り関して解説していきます。

特別受益とは

まずは簡単に「特別受益」を説明します。

民法第903条にその規定があります。

 

被相続人から遺贈や贈与を受けた者がいる場合を考えます。

その者が他の者と同じ法定相続分の取得をしたのでは不公平になるとき、この遺贈や贈与等は特別受益となります。

つまり特別受益と言えるには、遺贈や贈与があり、その財産を受け取った者が共同相続人でなければなりません。

 

なお、特別受益と判断された場合には、その価額に応じて法定相続分が見直されることとなります。

受けた遺贈等を遺産の中に加算し、他の者とも分け合う形になるのです。

生命保険は特別受益にあたるのか

生命保険の被保険者が被相続人で、相続人となる者を保険金受取人としている場合、この保険金が問題になります。

全員が受取人になっているのであれば問題になりませんが、一部の者だけが受け取っているとトラブルに発展する可能性があります。

つまり、これを特別受益と捉えるのであれば保険金も遺産の一部と考えますので、それが一部の者だけに渡っているというのは不公平と言えます。

しかし遺産の外にあると考えるならば、一部の相続人が受け取っても不公平とはなりません。

なぜなら当該保険金は相続財産ではなく、あくまで相続と同時に請求権が発生したにすぎないからです。

原則は特別受益にあたらない

この問題につき、注目すべき判例があります。

判例によると、相続人が受け取る死亡保険金(またはその請求権)は、特別受益にあたらないと評価されています。

ただし、他の者との間に不公平が生じ、その程度が著しいと言える「特段の事情」があれば話は変わってきます。

つまり、原則、生命保険金は特別受益にあたらないとしているものの、例外的なケースもあるということです。

特段の事情があれば特別受益になり得る

それでは「特段の事情」とはどのような事情を言うのか見ていきましょう。

まず重要になるのは、保険金として受け取る価額と遺産の価額を比較した、保険金額の割合の大きさです。

これは大きな判断材料の一つです。

極端に言えば、遺産総額100万円に対し、保険金額が1000万円なら非常に大きな割合を占めることとなり共同相続人としては不公平を訴えたくなるでしょう。

また、同居の有無や被相続人の介護をしていたなどの事情も考慮されます。

例えば保険金額の価額が比較的大きなものであったとしても、受取人が介護を長年貢献的に行ってきたという背景があるのなら不公平とは言い切れなくなります。

こうした生活実態等の諸般の事情を考慮して、公平さを評価していきます。

否定した事例

まずは、原則通り保険金を特別受益ではないと評価した事例を紹介します。

遺産の総額は約7000万円という状況において、保険金額は約400万円と遺産総額の10%にも満たないという場合です。

しかも受取人は被相続人と同居し介護もしていたという事情がありましたので、ここでは生命保険金につき特別受益ではないと判断されています。

 

別の事例でも、遺産総額に対する保険金額の割合が10%未満、受取人が介護もしていたという事情のもと、特別受益ではないと判断されています。

肯定した事例

遺産総額8000万円ほど、保険金額は約5000万円で遺産総額の6割ほどを占めるという事例では特別受益と評価されています。

さらにこの事例では、受取人が被相続人と結婚してから3年しか経っていないという事情もありました。

 

別の事例でも、遺産総額1億円に対し保険金はこれをさらに超える価額で、特別受益にあたると評価されています。

ここでの受取人も同居および介護もしていませんでした。

 

特別受益にあたると評価された事例では、いずれも保険金の割合が大きなものでした。

しかしこの割合なら必ずしもそうなるわけではありませんので注意が必要です。

同居期間、介護期間が長く、その他特別な事情があれば割合が大きくてもそのまま受け取ることができる余地もあります。

特別受益かどうかの確認訴訟は不可

受け取る生命保険金が特別受益なのか否か、受け取る本人からすれば非常に大きな問題です。

そのため事前に確認をしておきたいと考えるかもしれません。

しかしここでも知っておきたい判例があります。

それは確認をするだけの訴訟は認められないというものです。

 

この場合の確認は不適法であると判断された例があります。

遺産分割等の具体的事件の中でその評価をしなければならないのです。

 

そのため、保険金の受け取りに関して不安がある人は、弁護士等の専門家に相談するようにしましょう。

ただ、原則はそのまま受け取ることができるとされていますので、生前に贈与を受けるよりも保険契約を活用したほうが受け取る側としては都合がいいケースが多くなるでしょう。

 

被相続人になる立場の人も、トラブルが発生しないよう、あらかじめ受取人の指定や遺産総額との比率を確認しておきましょう。

認知症の相続人がいる場合は、後見制度か遺言を利用しよう

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認知症と診断された人は数百万人を超え、医学の劇的な進歩などがなければ今後も数十年単位で増えていくと想定されています。
少子高齢化、長寿化なども大きく関係し、人口全体に対する認知症有病割合・絶対数ともに増加していく見込みです。

 

認知症にまつわる問題は介護や家族の人間関係など多岐に渡りますが、このブログで扱っている「相続」にも関係してくる問題です。

ここでは特に、認知症の人が相続人となる場合に生じる問題およびその対策について解説していきます。

認知症の人でも相続はできるのか

認知症と診断された人の親や兄弟等が亡くなったとき、その認知症の人が財産を引き継ぐ立場(相続人)になることがあります。

 

しかし認知症によって判断能力を欠いているような場合には、法的行為を有効に単独で行うことができないケースがあります。

そのため法定後見という制度が用意されており、本人の判断能力に応じて後見人・保佐人・補助人を付けることができます。

後見人等は判断能力が不十分あるいは欠いている本人に代わり意思表示などを行います。

 

それでは本人に後見人が付いていない場合、相続はできるのでしょうか。

結論から言うと、相続することは可能です。

相続はもともと本人の意思表示を要することなく財産を引き継ぐという性格を持っておりますので、相続人が認知症の人であっても、法定されている割合に応じて財産は引き継がれます。

他に相続人がいる場合もあるかと思いますが、それらの人たちと共に共同相続人として財産を分けることになります。

遺産分割協議をするには代理人が必要

相続自体、相続人が認知症であっても問題なくできます。

しかし実情としては遺産分割協議を行うケースが多く、この場合には認知症の相続人に代理人が必要となります。

遺産分割協議は、引き継ぐ財産を共同相続人間でどのように配分するのかを決める話し合いのことです。

法定相続分で決するのではなく、自分たちで、誰がどのような財産をどれだけもらうのかを決めたい場合に行われます。

 

ここで問題になるのが認知症の相続人がいる場合の遺産分割協議です。

すでに説明した通り、判断能力を欠いている者は単独で有効な法律行為をすることができませんので、後見制度による代理人を用意しなくてはなりません。

遺産分割協議は相続人全員で行わなければならず、悪い意図がなかったとしても他の相続人が代わりに本人の記名押印をすることは許されません。

遺産分割協議書作成にあたり私文書偽造罪などの犯罪が成立してしまう可能性もあるため、遺産分割協議を行う場合には注意が必要です。

 

そこで次に、代理人として動いてくれる後見人を付けるにはどうすればいいのか説明していきます。

後見人を付ける手続

相続人の中に認知症の人がいる場合、遺産分割協議をするため、後見人と呼ばれる代理人等を付けなければなりません。

そこで後見人を付ける方法ですが、家庭裁判所への申立てを要します。

 

認知症による判断能力を失っている本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対し行います。この申立てをできるのは本人の配偶者や4親等内の親族などです。

一部親族以外の者からも申立てをする権利が認められています。

申立を行うのに必要なのは以下のものです。

  • 申立書
  • 手数料
  • 郵便切手
  • 診断書
  • 戸籍謄本
  • その他本人の財産に関する資料等

手数料には申立手数料と登記手数料があります。

いずれも大きな金額ではありません。

また、本人に対しすでに後見人が付いていないことなど、これらに関する登記がされていないことを示す登記事項証明書も提出します。

 

申立が認められるにはその後裁判所からの質問に応じたり、本人に対し鑑定をしたりしなければなりません。

後見人を付けるときの問題点

家庭裁判所に後見開始審判を申立てても、実際に選任され、遺産分割協議に取り掛かるまで1か月以上はかかると言われています。

しかも代理人として登場してきた後見人は、親族でもない外部の専門家です。

費用もかかりますし、見ず知らずの専門家とともに話し合いをしなければなりません。

 

家族がすでに後見人となっている場合でも、相続においては認知症を発症している本人と利害が対立する立場になるため、別途特別代理人を立てなければなりません。

 

そのため相続が始まってから申立をするのではなく、事前に信頼できる専門家に後見人になってもらうことが望ましいでしょう。

これが難しい場合には、下の「遺言」を作成しておきましょう。

 遺言でトラブルが防止できる

「遺言」によって財産の配分を決めるのであれば、相続人の中に認知症の人がいたとしても申立てなどの手続を要することなく相続を進めることができます。

遺言は被相続人がする行為ですので、相続人の判断能力などは関係ありません。

 

ただし遺言の作成方法は法律で厳密に定められておりますので、せっかく作った遺言が無効とならないように気を付けましょう。

被相続人が1人で作成することは可能ですが、どのように作成しなければならないのか、専門家に相談しておくのが一番です。

連帯保証と相続の関係!相続放棄するとどうなるのか

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相続にも種類がある

親や親族が亡くなったとき、何もしなければ保有していた財産につき相続が行われます。
しかし一定の手続を経ることで相続をしないという選択も可能になります。
いくつかのパターンがあることをまずは理解しましょう。

相続放棄について

相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」があります
単純承認ではプラスの財産もマイナスの財産(借金など)もそのまま引き継ぎます。
限定承認ではプラスの財産からマイナスの財産を引いて残った分だけを引き継ぐ形になります。
ただし限定承認をするには一定期間内に共同相続人全員で意見を一致させる必要があります。

 

これらに対し相続放棄では、すべての財産の引継ぎを放棄します

他に相続人がいたとしても一人で放棄可能です。

一定期間内に手続を経なければならないことなどは限定承認と同じですが、一人でできるためハードルは低く、複雑な問題が生じにくいという利点もあります。

相続放棄をするとどうなるか

相続放棄の効果

相続放棄をした場合、その者は初めから相続人ではなかったと扱われます

被相続人が持っていた義務も権利も一切関係なくなります。

相続放棄が一度認められると取り消すこともできず、残った財産をやっぱり受け取りたいと思っても引き返すことはできません。

そこでしっかりと熟考して判断しなければなりません。

 

そして相続放棄による効果は自分だけでなく、家族や親戚など、周りの人へも及びます。

例えば財産は、人数分および被相続人との関係性によって法定の相続割合が決まっています。

子ども2人だけが相続人なら相続する財産も2分の1です。
しかし一方が相続放棄するともう一方の相続人がすべての財産を引き継ぐことになるのです。
これはマイナスの財産であっても同様です。

そのため、相続放棄によって他の相続人にかかる借金の負担が増える可能性にも配慮し、事前に放棄をしようする旨を伝えておくことが大切です。

被相続人が連帯保証人のケース

それでは、被相続人が連帯保証人であった場合には相続放棄でどうなるのか、見ていきましょう。

 

そもそも連帯保証人とは、ある債務者(借金をした本人など)の債務を保証するため、債権者(お金を貸した人など)と連帯保証の契約をした者を言います。

この契約をしていると、債務者が弁済できなかった場合、連帯保証人が弁済の義務を負わなければなりません。

 

相続人の視点からすればマイナスの財産を持っている状態です。
そのため被相続人が亡くなった後、何ら手続をしなければ他の財産同様連帯保証人としての立場も引き継ぐことになってしまいます。

 

そこで、被相続人が連帯保証人となっているときには相続放棄を手段の一つとして考えることになるでしょう。

相続放棄をすると、上述の通り、その者は初めから相続人ではなかったと扱われるため、連帯保証人としての立場も関係なくなります。

つまり相続放棄をしていれば、債務者が弁済できなかったときでも代わりに支払う必要はなくなります。

相続人が連帯保証人のケース

次に、相続人が連帯保証人であった場合を考えてみます。

例えば被相続人の父親が債務者で、その相続人である子の自分が連帯保証人になっているケースです。

 

父親の債務については相続一般の考えと同じで、相続放棄をすれば関係性が断絶されるため弁済の義務は引き継がれず、債務は消滅します。

それではその債務の弁済を保証していた契約はどうなるのでしょうか。

債務が消滅しているため連帯保証の義務は消滅しそうにも思えます。

しかし実際にはそうなりません。

 

相続放棄した者がもともと持っていた連帯保証人としての立場は残り続けます。

なぜなら主債務の契約と連帯保証契約は別物と考えられているからです。

両者は必ずしもセットで発生・消滅するわけではなく、別個の契約として締結されます。

 

よって、このケースでは相続放棄をしても連帯保証から逃れることはできません。

相続放棄をする方法

相続放棄をするための方法など、知っておきたいことをまとめていきます。

3か月以内の手続が必要

相続放棄をするには、熟考期間と呼ばれる期間内に手続をしなければなりません。

放置し続けていると自動的に連帯保証人としての立場なども含めてそのまま引き継いでしまいます。

 

熟考期間は、相続開始を知ったときから3か月です。

「相続開始から」ではありません。

ただし例外的に、この期間を延長してもらうこともできますので、どうしてものときには家庭裁判所に申し出るようにしましょう。

 

相続開始を知ってから3か月の期間はありますが、その間、残った財産の調査などを行うため、それほど余裕があるわけではありません。

特に財産が多い場合には調査に時間がかかることも考えられます。

そのため相続開始を知ってからはできるだけ早期に着手するようにしましょう。

家庭裁判所への申述

相続放棄をするには家庭裁判所へ申述する必要があります。

その際、相続放棄申述書を添付資料と一緒に提出します。

 

また、相続の開始を知るのが遅れた場合、申述までに開始から3か月という期間を過ぎていることもあるかもしれません。

このとき、相続を知ってからは3か月を過ぎていない旨記載した上申書を提出します。


上申書が必要な場合、それが認められるかどうかが非常に重要ですので専門家に相談して作成するようにしましょう。

相続の相談は誰にするのがいい?専門家別の特徴を解説!

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相続の手続や税制は複雑です。

一般の方でこの仕組みを理解している方は少ないかと思います。

 

そこで専門家への相談をおすすめしますが、その相談先にもいろいろあります。

それぞれに特徴が異なりますので内容に応じて選択することになるでしょう。

相続の相談先にはどんなところがある?

下の4つの専門家が相続に関する代表的なプロと言えるでしょう。

この他にも銀行や役所、法務局、税務署などがあります。

ただしこれらで相談できる内容はかなり限られています。

基本的に、そこで展開しているサービスに関連する範囲でのみ質問ができるという程度です。

対応してくれる人によっては色々と教えてくれる可能性もありますが、相続全般を深く質問したいという場合には向いているとは言えません。

 

なお、各専門家であっても、あらゆる相続問題を解決できるとは限りません。

カバーできる範囲の広さも専門分野もそれぞれ異なりますので、各専門家の特徴を知って上手く使い分けられるようにしましょう。

特に知っておきたいことは、法的にカバーしていい範囲が決められているということです。

例えば裁判における弁護は原則弁護士しかしてはいけないと決められているように、それぞれの専門家が手を出せる範囲は法定されているのです。

専門家別の特徴

専門家別の特徴を捉え、適切な相談先を理解していきましょう。

弁護士

弁護士は法律の専門家です。

特にトラブルが生じた際の相談先としての利用が多くなるでしょう。

相続人間で揉めてしまったときや、第三者と争いになったときには弁護士に頼ってみましょう。

 

ただし弁護士に対して「紛争解決」のイメージが強いことから、単なる相続手続に関する相談をしたとしても、周囲に攻撃的な印象を与えてしまうおそれもあります。

費用も比較的高くつく傾向にあります。

 

そのためトラブルが起こっている、または起こりそうなケースなどに頼みます。

弁護士に相談した際には話が大げさにならないようにし、周りの人が身構えないよう配慮するといいでしょう。

司法書士

司法書士は登記の専門家です。

例えば土地や建物といった不動産の名義変更や、会社役員の変更などの場面で必要になることが多いです。

相続を専門として扱っている事務所も珍しくないです。

色んな相続手続きを代行してくれるサービスを展開しているところもあるでしょう。

 

ただしあらゆることが代行できるわけではありません。遺産分割時の相続人間の利害調整など、弁護士が必要になることもあります。

行政書士

行政書士は権利や義務に関する書類作成の代行が主な仕事です。

イメージが湧きにくいかもしれませんが実は対応可能な範囲も広く、遺産分割協議書の作成や相続関係説明図等の作成依頼も可能です。

自動車の名義変更、農地を相続する場合の届出なども行政書士の独占業務です。

 

登記等が必要なら、他の専門家と連携している事務所かどか確認するようにしましょう。

費用は他の専門家より比較的低めに設定されています。

税理士

税理士は上の3つの専門家とは少し毛色が違います。

法律ではなく、税に関する専門家です。もちろん税に関する法には精通していますが、基本的には確定申告や相続税申告などの場面で登場します。

相続財産の価額が大きい場合にはそれだけ大きな税がかかってきますが、工夫次第で節税することができ、対策するかどうかで金銭的に大きな差が出てきます。

 

ただし登記やトラブル解決、遺産分割協議書等の作成などはできません。

そのため相続税がかかってくるという場面でのみ相談するといいでしょう。

9割以上の方に相続税申告の必要性がないという実情があるため、税理士を探すのは限られた方のみでしょう。

相談先の選び方

選び方のポイントとして、1つは上で説明した対応可能範囲を知るということが挙げられるでしょう。

簡単に言うと、登記なら司法書士、書類作成なら行政書士相続税のことは税理士、トラブル解決は弁護士、となります。

 

他には、他士業との連携ができるかどうかもポイントとなります。

司法書士のところへ相談しに行った後で相続税の申告が必要なことに気が付いた場合、そこから税理士を探さなければなりません。

しかし事務所によってはこのような事態を想定して、すでに他士業と連携し、依頼主が余計な作業をしなくてもいいようになっていることもあります。

そのため、できるだけ専門家同士が繋がっており、連携体制が整っている事務所に相談すると良いでしょう。

 

次に費用もポイントになります。

費用の高さや低さで判断するのではなく、料金体系が明確に示されているかどうかが重要です。

どこまで対応してくれるのかも明示されていないと、事務所とトラブルになることもあり得ます。

また相続問題を得意としているかどうかも確認しておきましょう。ホームページ等を見て、これまでの実績、経験から信頼できるかどうか判断します。

 

最後に、相談した際の印象も重要なポイントです。

真摯な対応をしてくれるのか、しっかりと話を聞いてくれるのか、当たり前のことですがしっかりと意思疎通ができていないと希望通りの結果にならないこともあります。

無料相談を実施している事務所も多くありますので、実際に話してみて、相談したいと思える相手に依頼するといいでしょう。

ブログを見ていただいている皆様へのメッセージ

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ご訪問頂きありがとうございます。

 

このサイトでは相続問題についての対処法や法律の解説をしています。

 

できるだけ皆様が相続問題の悩みを解決できるよう、色んな事例を取扱い、具体的な解決策を紹介していければと考えております。

なかなか知る機会のない相続に係る手続など、わかりやすく解説していきますので、これからもご愛読いただければと思います。

 

このブログで扱うテーマですが、「相続」と一括りに言っても、様々な問題があります。

例えば相続される財産の割合はどのように決まっているのか、遺言の書き方や生前贈与、相続の放棄や保証人との関係など、多岐にわたります。

そこでまずは相続の全体像を掴めるよう、基礎知識やいくつかの分野を分けて簡単に説明していこうと思います。

相続とは何か?

そもそも相続とは何なのか、あまりよく分かっていない方もいるかと思います。

 

相続は、亡くなった方が持っていた財産などを引き継ぐことを言います。

この亡くなった方のことを「被相続人」と言います。

これに対し財産を引き継ぐことになった方のことを「相続人」と言います。

相続人には、例えば妻や夫、子どもや兄弟、親などが該当することがあります。

常にこれらの方が相続人になるわけではなく、家族構成など、様々な状況に応じて相続人は決まることとなります。

こうしたルールは法律で全て決められており、優先順位に応じて引き継ぐ財産の割合も決定します。

残された妻や夫、配偶者は最も優先的に相続がなされ次に子どもが優先されるといった形でルールが作られています。

遺言とは

こうしたルールは民法にその規定が置かれていますが、法定通りのルールに従わないことも場合によっては可能です。

遺言によって被相続人が指定しているケースには、その本人の意思を尊重し、遺言の内容に従った相続が行われます

 

ただ注意が必要なのは、遺言の方法にも正しいやり方というものが存在し、適切に作成されていなければ意味がなくなってしまうことも起こり得ます。

 

例えば遺言にもいくつかの方式があることをご存知でしょうか。

「自筆証書遺言」と呼ばれるものや「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などがあります。

これらはいずれも普通方式に分類される遺言方式ですが、他にも特別方式というものもあります。

通常は利用することのない方式ですので、詳しく知っている必要はありませんが、仕事柄、もしくは特殊な行動をする場合には知っておいたほうがいいケースもあります。

 

遺言を正しく作成できることの良さは、被相続人の意思を亡くなってからも伝えることができ、自らの財産の行く末を思い通りに指定できる点にあります。

遺言の大きなメリットはもう一つあります。

それは相続人間のトラブルを防げるということです。

常に防げるというわけではないものの、家族関係などを配慮し被相続人が適切に指定してあげることでトラブルなく相続を行いやすくなるでしょう。

大きなお金が絡む問題であるため、良好に思えた関係も崩れてしまうおそれがあります。

 

被相続人としてできる大きな対策の一つがこの遺言なのです。

引き継がれる財産

引き継がれる財産についても色んな種類があります。

 

まず理解しておきたいのは、常に相続人にとって嬉しい財産が引き継がれるとは限らないということです。

端的に言えば、借金も引き継がれてしまうということです。

そのため、相続によって経済的に損をしてしまうこともあり得ます。

もちろん、被相続人の借金を含めた財産すべてを強制的に引き継がされるわけではありません。

断ることもでき、また限定的に引き継ぐことなども可能です。

しかしこうした色んな手段があることを知らず、なすがまま相続をしてしまう人たちがいるのも確かです。

 

相続によって引き継がれる主な財産としては、現金や預貯金のほか、土地や建物などの不動産、宝石や高価な腕時計、絵画などあらゆる物(動産)が含まれます。

ただしここで問題になるのが、その財産の分け方です。

現金や預貯金であればそのお金を相続割合に応じて分けるだけで済みますが、不動産や動産の場合にはどうすればいいのでしょうか。

この場合、相続人の間で話し合いをしなければなりません。

遺産分割協議とは

遺産相続の手続において相続人が複数いる場合、遺産分割協議をしなければならないこともあります。

誰が何をどのように引き継ぐのか、話し合います。

しかしここが最もトラブルに発展しやすいポイントでもあります。

 

そこで遺産分割はどのようにするとトラブルにならずに済むのか、対処法を事前に知っておくことが望ましいです。

まずは財産の調査を行い、相続人間でしっかりと情報共有、スケジュールも調整していかなければなりません。

不当に財産を受け取ろうという意図がなくても、行動によっては変に勘繰られて怪しまれることもあります。

そうすると次第に関係性が悪化してしまい争いが生じることがあるのです。

できるだけ全員で協力しながら話を進め、相続の専門家などを間に挟みながら手続を進行させていくといいでしょう。

法律も変化していく

相続に関して皆さんに知っていただきたいのは、ここまでで紹介してきた基本的な手続や知識だけではなく、法律そのものが変化することもあるということです。

遺言の制度や相続自体がなくなるような大きな変化はそう起こるものではありませんが、細かなルールはゆっくりと変化していきます。

そのため重要なポイントだけでも追っていくようにするべきです。

実際、2019年からは段階的に民法の改正が進められ、条文の変更や新設がなされています。

 

例えば遺言の作成方法についてもこの一連の中で改正されています。

もともと自筆証書遺言という遺言方式では、遺言者が手書きで作成しなければならないと決められていました。

しかし民法によって部分的にパソコン等での作成ができるようになり、遺言者の負担は軽減されることとなりました。

 

また特別の寄与の制度も創設されています。

これは法定の相続人以外の者でも遺産の一部を受け取ることができる制度です。

例えば生前に認知症を発症していた被相続人に対し、無償でお世話をし続けていた人などが該当し得ます。

看護・介護は特別な寄与として、寄与料を請求できる可能性があるのです。

このような制度を知っていなければ、相続人でないからと何も恩恵を受けられないままに過ごすことになるでしょう。

 

つまり、相続についてルールを知っているかどうかはトラブルを防ぐだけでなく、関係者の損得に密接に関わる問題でもあるのです。

無知であることのリスク、そして知るということの重要性をご理解ください。

その上で、具体的な対処法などについては今後配信していく記事を見ていただければと思います。

最後に伝えたいこと

世の中には法律に詳しい人たちばかりいるわけではありません。

しかし法律を知らなかったからといってすべてが許されるわけではなく、基本的には知らなかったからという言い訳は通用しません。

そのためまずは身近な法律や手続に関する知識を仕入れ、大きな損害を受けることのないようにしなければなりません。

ご自身や親族の年齢によっては相続を身近に感じていない方も多くいるかと思います。

しかし相続はいつ起こるか分からないものであり、また必ず接することになるものでもあります。

 

このブログを読んでいただいている皆様には少しでも相続について知っていただきたいです。

ブログを読み続けていれば、来たる日にも慌てることなく適切な行動を取れるようになっていると思います。

また事前にできる対処もいろいろあります。

すべてを理解できなくても、まずは興味の湧く内容からでも読んでいただければと思います。

プロフィール

 

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筆者について

行政書士という存在をご存知でしょうか。

街の法律家と呼ばれることもあり、弁護士や司法書士などと同じく法律に精通する専門家です。

 

法律家と言えば弁護士が真っ先に思い浮かぶかと思いますが、より身近な法律家として行政書士も広範な業務を受けて活動をすることができます。

 

相続についても行政書士が関わる問題です。

私はこの行政書士の資格を持ち、専門家としての立場からこのブログを執筆しております。

このブログについて

このブログでは、相続に関する様々な問題を取扱い、その具体的な解決方法や各種手続について解説していきます。

例えば相続はどのようなルールで行われるのか、どのような手続が必要なのか、誰と話し合う必要があるのか、といったことです。

 

相続に係るルールは複雑で、財産や残った親族の構成によっても対処は変わってきます。

そしてこのルールは法律として定められており、行政書士司法書士、弁護士等の法律家でなければなかなかすべてを理解することは難しいものもあります。

そこで、このブログではできるだけ噛み砕いて説明し、読んでいただいた方が少しでも相続について理解できるように尽力します。

 

より理解し、取るべき対応を分かっていただくためには、ただ法律のことを解説していくだけでは不十分と考えています。

そこで具体的な事例や身近な問題を扱い、イメージしながら読んでいただけるような記事を配信できればと思います。

このブログを始めたきっかけ

ブログを始めようと思ったのは、相続に関して悩みを抱えている方が多くいることを知ったことが始まりです。

相続に関するルールが一般の方には難解であることや、一生のうちでも接する機会がほとんどないこともあり、多くの方はトラブルに対処できずにいます。

しかも相続問題では財産や権利が絡むため、身近な人とトラブルに発展しやすいです。

単に経済上の問題が生じるだけでなく、人間関係にも強く影響する問題です。

 

そこで私の経験や知識を発信することで、少しでも多くの方が相続に悩まされることがなくなれば幸いです。

読者の皆様に知っていただきたいこと

相続について、遺産や遺言のことを話し合うことは決してネガティブなことではありません。

最近では「終活」という言葉もよく用いられるようになり、人生の終わりに向けた活動を多くの人が始めています。

人口の減少や高齢化が年々進む中、相続について知っておくっことの重要性もますます高まっています。

 

私はここのブログを通してできるだけ多くの方をサポートできればと考えておりますのでご愛読いただければと思います。