相続が開始されると、特に関係者が多い場合や財産が多い場合には専門家に依頼して手続きを進めるのが一般的です。
そこで、自分で手続きを進めることはできるのか?と考える人もいるでしょう。
ここでは自分だけで手続きに取り掛かった場合、どのような点で困るのか、また専門知識なしに進めるのが難しい手続きについても紹介していきます。
各段階で躓くポイント
まずは基本的な流れに沿って説明していきます。
戸籍謄本の収集
相続人を調査するにあたり戸籍謄本を集める必要があります。
本来、それほど難しい作業ではありませんが、被相続人が生前戸籍の転籍を繰り返していた場合などには大変な作業となります。
またその調査において連絡が取れない相続人が出てくることもしばしばです。
自身の知らない相続人や、長らく連絡を取っていない相続人などがいるとその後も続く相続手続きがなかなか進められなくなります。
しかも役所は平日しか受け付けていないため、会社員の人ならわざわざ休まなければなりません。
遺産分割の話し合い
分配する財産について話し合わなければ法定の相続割合に応じて相続がなされますが、多くの場合、遺産分割協議によって調整がなされます。
しかし自分だけで手続きに取り掛かっていると、この話し合いの場でトラブルに発展する可能性が高くなってしまいます。
大きなお金が動く場ですので、その分け方に納得できない相続人が1人でもいると揉めてしまいます。
また共同相続人の全員が納得していたとしても、相続人の配偶者や子どもなどが文句を言ってくることも珍しくありません。
法的には相続人でない者が同意をしなくても問題はありませんが、その後の人間関係などが悪化する可能性があります。
そのため、専門家を第三者の立場として置き、アドバイスをもらいながら話を進めていくことが望ましいでしょう。
財産の名義変更
被相続人の財産を引き継いだ場合、名義を変更する手続も必要になります。
大別すると不動産の名義変更、そして不動産以外の名義変更です。
不動産の場合、建物や土地の所有権移転登記をしなければなりません。
しかし不動産関連では自分で調べようにも専門用語が多く進めるのが難しいでしょう。
しかも間違ったやり方をしてしまい所有権の主張ができなくなってしまうと、非常に大きな損失にも繋がりやすいため慎重にならなくてはなりません。
登記に関しては司法書士に頼みましょう。
不動産以外のものとは、例えば預貯金や自動車、保険などです。
すべて自分だけでやるには集める書類の量も種類も多すぎて、手間がかかり過ぎてしまいます。
一日仕事を休んだところで、完結できるとも限りません。
書類集めから銀行等への訪問、相続人全員の署名捺印をもらうなど、やることは多岐に渡ります。
一つ一つ難易度の高い作業ではありませんが、労力がかかり過ぎてしまいますので、専門家に依頼することをおすすめします。
専門性の高い手続き
上述の手続きは、手間や時間がかかり過ぎてしまうという観点から躓くポイントをいくつか挙げてきました。
これに対し以下では、手続きの専門性の高さから難易度が高く、専門家に頼んだほうがいいという手続きを紹介していきます。
相続税の申告
相続税の申告は税理士に依頼するべきです。
その理由は、短期間で適切な申告をしなければならないということと、やり方次第で大きな損失が発生してしまうということにあります。
また申告にあたり知っておかなければならない法知識も幅が広く、しっかりと手続きを理解して進めなければなりません。
例えば民法や相続税法、そして節税のための実務的な知識も備えていることが望ましいです。
しかし相続開始を知ってから学び始めたのでは時間が不十分です。
専門家でなければ難しいと言えるでしょう。
他の相続人が協力してくれないときの対応・
遺産分割協議など、各手続きで共同相続人の同意を得なければならない場面もあります。
このようなとき、他の相続人が協力をしてくれないと思い通りには進められず、時間もかかってしまいます。
また明確な意思表示をしてくれないケースでも問題になりやすいです。
揉めてしまった場合や、もしくは何もアクションを起こしてくれず協力してくれない相続人がいる場合などには専門家のアドバイスを受けて進めていきましょう。
行方不明者がいる場合の手続き
生死不明、所在も不明という問題は意外と多くあります。
行方不明者に対する法制度も整備されており、これの調査自体がそれほど困難になるわけではありません。
しかし行方不明者がいることによって他の手続へ影響が及び、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し出なければならないなどの手間がかかってしまいます。
国際結婚をしているケース
国際結婚をしており、外国籍の方が亡くなった場合、その国における法律を調べなければなりません。
日本の法律を知っているだけでは対応できず、海外の法律にも精通していなければなりません。韓国籍など、事例の多いケースでは対応もしやすくなりますが、これまでに事例の少ないケースだと調査に時間が多く要してしまいます。
そのため、日本国籍の方が亡くなった場合の相続手続きに比べて翻訳なども併せると手間が増え、難易度もかなり高くなります。