遺留分侵害額請求権の行使方法について解説

f:id:samuraigyou:20210215164930j:plain

遺留分侵害額請求権の行使方法

遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害している他の相続人や、遺産を相続した受遺者に対して行います。

 

遺留分侵害額請求権は、形成権ですから相手側へ意思表示するだけで効果が発生します。

 

つまり相手側と話し合いによって請求することもできますし、相手側との直接交渉が難しい場合や相手が請求に応じない場合は、裁判所を利用することもできます。

 

ですから、遺留分侵害額請求権の行使には決まった方法があるわけではないのですが、一般的な進め方について順に説明していきましょう。

 

(1)相続財産の調査と相続人の確定

まず、被相続人にはどのような相続財産があるのか、また誰がどのくらい相続したのかを調査して確定させる必要があります。

 

特に遺留分に関しては、被相続人遺言書の内容をしっかり把握する必要があります。
遺言書の内容を見て、誰が遺留分を侵害しているのか確認しておきましょう。

 

 

(2)相手方へ内容証明郵便で請求する

遺留分の内容と遺留分侵害額請求する相手方がわかったら、遺留分侵害額請求の意思表示を相手方に示さなければなりません。

 

「あなたが侵害している遺留分の返還を請求します」という意思表示を相手側に示すだけで、遺産を貰い過ぎた相手方は遺産を返還する義務が発生します。

 

このときの意思表示方法には、決まった手続きなどがあるわけではありませんから、どんな方法でも構わないのですが、口頭で伝えただけでは証拠が残りません。

 

確実に相手方へ遺留分侵害額請求したという証拠は残しておきたいので、郵便局の内容証明郵便を使って請求することをおすすめします。

 

内容証明郵便とは、日本郵便の一般書留郵便物で文書の内容を証明するサービスです。
差出人、郵便局、相手方の三者に全く同じ内容の文書が残りますし、確定日付や配達証明サービスをつけることもできますから、相手方へ遺留分侵害額請求したという証拠を残すことができます。

 

(3)相手方と交渉する

内容証明郵便による遺留分侵害額請求権を行使した後、相手方が侵害額の支払いを検討しているようなら、細かい侵害額の確認や具体的な支払い方法について協議します。

 

全く知らない方が受遺者となっている場合もありますが、基本的には親族間の問題ですから、話し合いによる決着が望ましいでしょう。

 

ただし、相手方や他の相続人と遺留分侵害額について交渉を行う場合、当人同士では話がまとまらないケースも多いため、そのような時は弁護士に相談し、客観的な視点から協議の調整をしてもらうことをおすすめします。

 

相手方と話し合いにより、遺留分侵害額の支払いを受けられた場合は、ここで終了となります。

 

ですが、このような協議を行っても相手方が全く遺留分侵害額請求に応じないとか、そもそも内容証明郵便を送付しても無視するといった場合は、家庭裁判所遺留分侵害額請求調停を申立てるというステップに進むことになります。

 

(4)家庭裁判所へ調停を申立てる

遺留分侵害請求については、離婚問題などと同様に調停前置主義がとられています。
ですから、最初から訴訟を起こして裁判するということはできませんのでご注意ください。

 

遺留分侵害額請求調停は、遺留分を請求する相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てます。

 

当事者が合意で定める家庭裁判所がある場合は、そちらに申立てても問題ありません。

 

必要書類を揃えて申立てを行った後、受理されると裁判所から第1回目の調停の期日が通知され、裁判所に出頭することになります。
調停では、裁判所が選任した調停委員が加わり、話し合いを進めていきます。

 

調停は、相手方と合意に達するまで続けられることになりますが、合意できた場合は調停調書が作成されます。

 

この調停調書には裁判の判決と同じ効力がありますので、調書内容に従わず違反があった場合は、すぐに強制執行ができるという効果があります。

 

(5)裁判所へ訴訟提起する

どうしても調停による話し合いでは決着しないという場合は、裁判所へ訴状を提出して訴えを提起するしかありません。

 

訴状の提出先は、相手方の住所地に加えて被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所となります。
調停の場合と同じく、当事者が合意で定める地方裁判所もしくは簡易裁判所がある場合は、そちらに申立てを行っても問題ありません。

 

ただし、裁判となった場合は、個人では対応することが難しいので、相続関係に詳しい弁護士に依頼することになるでしょう。

 

まとめ

遺留分侵害額請求権を行使するためには、裁判所への請求等は必要なく、遺留分を侵害している相手方に対して、権利行使の意思表示をするのみで足ります。

 

この相手方への意思表示は口頭で行っても良いのですが、確実に遺留分侵害額請求を行ったことを示すためには、証拠が残る内容証明郵便による請求をおすすめします。