相続財産に不動産がある場合に、不動産を相続した方が相続登記を自分で行った場合と、司法書士に依頼した場合の相場を確認します。
登記に必ずかかる費用と司法書士報酬の違い
前回解説した通り、不動産の相続登記をする場合は、登録免許税を法務局に納めなければなりません。登録免許税は自分で登記をする場合でも、不動産登記をする場合にかかる税金です。
つまり、司法書士に依頼しない場合でも、不動産登記の登録免許税はかかるので注意しましょう。
登録免許税のパターン
では、登録免許税はどのくらいの割合で、何を基準に課税されるのでしょうか。
登録免許税の課税標準と税率
相続登記に関する登記の課税標準は、土地や建物の固定資産課税台帳の登録価格です。
固定資産税課税台帳の価格が高ければ登録免許税は高くなります。
ただし固定資産課税台帳の登録価格は、時価よりも通常は低いのが特徴と言えます。
相続関連の登録免許税の税率
登記原因 | 税率 |
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相続 | 1000分の4 |
遺産分割 | 1000分の4 |
遺贈 | 1000分の20 |
相続パターンによる違い
相続による登記と一口に言っても、実は何パターンかあります。
登記原因 | 相続パターン |
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相続 | ・法定相続分で登記 ・登記前に遺産分割協議が整い、法定相続分と異なる割合で登記 |
遺産分割 | 法定相続分で登記した後に遺産分割協議が整い、「遺産分割」を原因として登記 |
遺贈 | 遺言による遺贈の登記 |
つまり、被相続人が亡くなった後、遺産分割協議前に相続を原因とする登記をしてしまうと、1度の相続で2回の登録免許税がかかるということです。
また、遺言により遺贈された財産を取得した人は遺贈による登記を行うので、通常の相続登記よりも登録免許税は高くなります。
数次相続の登録免許税の特例
数次相続の登記が終わっていない場合、いっぺんに登録免許税がかさむケースもあります。たとえば、祖父が亡くなったけれども祖父名義の不動産の相続登記が終わっていないうちに、祖父の相続人である父親も叔父や叔母も亡くなったようなケースです。
このケースでは原則として、父親の相続人である自分や、叔父・叔母の相続人である従姉妹たちで、何度か相続登記をしなければなりません。相続登記の件数が多ければ多いほど、登録免許税は高くなります。
しかし、数次相続の登記による登録免許税の負担を軽減する措置があります。
数次相続登記の登録免許税の免税措置
適用されるケース | ・相続によりにより土地の所有権を取得した場合 (相続人に対する遺贈も含む) ・当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したとき |
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いつまでに登記するか | 平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間 |
登録免許税 | 免税される |
なお、中間の相続人が生前に土地を売却していた場合でも特例を受けられます。
この特例を受けるには、相続による所有権移転の登記を法務局に申請するときに、申請書に所定の事項を書くなどの条件があります。詳細は司法書士や法務局に確認することをおすすめします。
相続関連の登記を司法書士に依頼するときの報酬相場
相続関連の登記を司法書士に依頼すると、登録免許税の他に報酬がかかります。
相続登記の報酬は司法書士事務所により幅がありますが、周辺事務を合わせると5万円から12万前後と設定する司法書士が多いでしょう。
ただし、次の事情により司法書士報酬は変動しますので、一律にいくらと言う事はできません。
- 相続不動産の数
- 戸籍謄本など取り寄せ代行の有無
- 数次相続か否か、遺産分割協議が未了か
司法書士に相続登記を依頼する際は、報酬見積もりを出してもらうとよいでしょう。その際、固定資産税納税通知書を司法書士に見せると、登録免許税も併せて算出した見積書をもらえます。