相続が始まってからは遺産分割をしたり、権利を守るため対抗要件を備えたりなど、しなければならないことがたくさんあります。そのため「いつ」相続が始まったのか、が重要になってきます。ここでは特に被相続人となる立場の人が失踪・行方不明になった場合における相続開始時期を説明します。
相続開始時期の基本
まずは基本的な開始時期に関してですが、ご存知の通り、本人(被相続人)の死亡によって相続は開始されます。このことは民法第882条にも規定されています。
民法第882条「相続は、死亡によって開始する。」
そのため通常だと、相続の開始時期がわからず困ることはそうありません。ただ問題なのは本人が失踪しており、死亡したかどうかがわからない場面です。
失踪者の扱いについて
本人の行方がわからなくなっているときに関しても、民法でその扱い方が規定されています。第30条第1項によれば、行方不明になって生死が「7年」わからない場合、家裁は失踪宣告ができるとあります。
行方不明になった者については生きている可能性があるものの、亡くなっている可能性があるにもかかわらずこの状態をいつまでも放置していると関係者に不利益が生じる恐れがあることなどから、7年間行方が不明であれば亡くなったものとして扱うことができるのです。
また、なかなか起こり得るシチュエーションではありませんが、船舶上にいた者に関する規定も同条第2項に規定されています。例えば船舶上にいる場合に嵐がやってきたとき、それにより死亡するおそれがあります。
そこで船が沈没してから「1年」、またはその他の危難が去ってから「1年」、生死が不明なときも失踪者と同じ扱いをする旨が規定されています。
失踪者に関する相続開始の時期
前項で説明したように、行方がわからない者については失踪宣告をしてもらうことができますが、同法第31条では、その「7年を経過した時に亡くなった」としてみなすと定められています。
ここで重要なのは、失踪した日に亡くなったと考えるのではなく、失踪してから「7年を経過した日」に亡くなったものと扱っている点です。つまり相続が開始されるのもこの日となります。
なお、船舶上にいた者に関してはより早期に死亡したものと考えられるため、「危難が去ってから1年経過後」ではなく、「危難が去ったとき」に死亡したものとし、相続が始まります。
亡くなったとみなす日がいつなのかによって様々な権利関係に影響してきますので、専門家に相談するなどして具体的な対応を検討するようにしましょう。