限定承認をすれば多大な債務の弁済など、リスクを小さくすることができます。しかし、その一方で限定承認をした者にはいくつかの義務が課されます。
ここでとりまとめる内容に留意して義務を果たしていかなければなりません。
財産の管理義務
民法第926条に、限定承認者による財産の管理に関して規定が置かれています。
この規定によると、「固有財産におけるのと同一の注意」を要するとあります。
これはつまり、自己の財産を管理するのと同等の注意義務を意味します。
職務上求められるような高度な注意義務までは課されていませんが、何ら管理をせず、放置していたのではいけません。最低限、自分の財産を守る程度の水準で管理をしておかなければなりません。
実際、その財産が自分のものになるかもしれませんし、何よりも財産が散逸してしまうと債権者は債権の回収ができなくなってしまいます。
限定承認したことを伝える義務
すべての債権者、受遺者に対して、自らが限定承認したことにつき公告をしなければなりません。
こちらに関しては期限がありますので要注意です。
「限定承認をしてから5日以内」と法定されています。
さらに、公告において、一定の期間内に請求の申出をすべきことも掲載しなければなりません。その期間は2ヶ月より短くはできません。
併せて、当該期間内に申出をしないのなら弁済の対象から外される旨も明記しなければなりません。
申出がなければ限定承認者はその分弁済の義務がなくなります。ただ、すでに債権者であることを知っている者がいる場合、申出がないからといって弁済の対象から外すことはできません。
財産を換価する義務
後の弁済を図るためには、現物のままでは実行できないことがあります。
そこで、相続財産を換価しないといけません。
限定承認者は財産を競売に付すことになります。
相続財産からの弁済義務
上の公告で定めた期間の経過後、限定承認者は、申出をしてきた債権者に対して、相続財産から弁済をしなければなりません。
ただし、単純承認と違って無限の義務を負っているわけではありませんので、債権者も全額の回収ができるわけではありません。
そこで、まずは優先権を有する者に弁済をし、残った分があれば債権額の割合に応じて弁済をしていきます。
なお、この時期においては、各債権が弁済期に至らないとしても弁済の義務から免れることはできません。
受遺者への弁済
受遺者に対しては、債権者に遅れての弁済となります。
全債権者に弁済してもなお財産が残っているのであれば、受遺者への弁済義務が生じます。